ロスレス音源とMP3は聞き分けられるのか?【コラム】
ロスレス音源とMP3などの圧縮音源に「聞き分け可能な差」があるのかどうなのかという科学的に有効なABXテストの結果ですが、統計学的には「聞き分け不能」というのが答えとなります。
つまり、WAVファイルとMP3/320kbpsで比較した場合、聞き分けられると言っている人は「嘘をついている」とも結論づけられます。
でもこれって「本当なの?」という話しをしたいと思います。
というのもここで語られているのはシステムがよくわからないからです。
ちなみに忙しい現代社会なので僕の結論を言ってしまえば、次のようになります。
■イヤホンではおそらく不可能
■入門クラスのピュアオーディオはたぶん無理
■判別可能なのはミドルクラスよりも上のシステム
と云うことになります。
と云うのも僕のメインシステムはだいぶ前にネットワークプレイヤーを導入してSACDプレイヤーも処分してしまいました。
もともとトランスポートとしてしか使っていなかったのですがDAC部分を使わないとそもそも差が出てこないので意味がないと判断したからです。
音源はすべてNASの方でデジタル的にスマホやタブレットで管理して音楽を好きに選択して流せるようにしていますが、時々、間違えるのです。
なにを?
僕はお手軽お気軽に聞く為にすべての音源をロスレスとMP3/320に二重化しているのです。
フォルダ分けしてスグに区別できるようにしているのですが、メインシステムで聴く場合は当然ロスレスを選択します。
これを間違えてMP3音源の方を時々流してしまうことがあるのです。
初めてこれを間違えたときは「てんやわんや」となりました。
あれ?音がおかしい・・なんだ?いや、こんな音出るわけない、と。
ひとしきり電源を入れ直したりケーブルをさし直したりしても音は変わりません。
なんだかんだとシステムを見直したりしていると何のことはない、MP3を流してしまっていたのでした。
このミスを時々やってしまうのですが・・二度目以降はだいたい30秒も流せば100発100中でミスに気がつきます。
ところがです。
同じ事をサブシステムの方でやってしまっても基本的には判別できるのですが、曲によってはまったく分かりません。
サブと言えどもハイエンド系なのですが、プリ系のノイズフロアがかなり高めなので普通のシステムよりちょっと難しくはなっています。
この事から分かるのは、ロスレスとMP3の判別可能かどうかはシステムによる、と云うことなのですが、関わっていると思われる部分は2つです。
■プリアンプの性能
■スピーカーの性能
おそらくDACとかパワーアンプ部分は関係ありません。
そして、これが判別可能なシステムになると「音源」を非常に選びます。
ですが、ではそういったシステムの方が優れている、のかどうかはまた別問題で、なんとも答えが出せません。
ただ一般的に言うのなら、こういった「繊細で敏感なシステム」は難易度としてはピュアのミドルクラス程度なら可能なのでそれほど敷居が高いものではなく、別にわざわざ目指すと云うことのほどでもありません。
ちょっとだけ注意しなければならないのは、こういったシステムではスピーカーが「一定水準以上」に達していないと、聴く音楽のジャンルまで選ぶようになってしまう、と云うことです。
何でも得意不得意の分野がスピーカーにはあるのですが、それでも「ある一定水準以上の音」が出せるスピーカならこの「偏り」がとても小さくなるのです。
この為、優れたシステムほど「平均的にどんなジャンルでも高いレベルで鳴らしてしまう」のです。得意不得意は当然有りますが・・・その差がとても小さくなります。
これが分かっていないと世の中に溢れている碌でもないスピーカーを手に入れてアコースティックな曲が得意だからとそればかり聴いたり、ピアノの音が良いというのでそればかりになります。
こういった場合、音源ではなく、たいていのケースでスピーカーなどの発音体の方の特性が「何か狂っている」といえます。
少し話しが脱線しましたが・・・ではイヤホンではどうか?と云われれば、たぶん100%不可能というのが僕の結論です。
そもそも10mm程度のドライバーとBAくらいではそこまでの「表現力」というのは備わっていません。
ピュアのシステムに無理矢理置き換えるのなら、どれを使っても低価格プリメインと入門用ブックシェルフ程度の実力が妥当なところで、残念ながらそれ以上には達しません。
これが分かっていないと50万のポタアンと30万の多ドラなら分かるのではないかと思ったりしてしまいますが、そもそもイヤホンという分野が属しているクラスそのものの「限界」なのですから、それを乗り越えるというのはそれこそ「非現実的」だといえるでしょう。
と云うわけで、なんでもそのクラスが属する上限の中で分をわきまえて「最高」を目指せば良いのです。
少なくとも「聞き分けられないシステム」にも「鈍感な良さ」というのがあって、比較的ジャンルや音源を選ばずに誰でもお気軽に音楽が楽しめるという重要な使命があるのです。