【レビュー】Final E3000 中華よ、コレが日本の音だ
随分と時間が掛かってしまいましたが、遂に本日final e3000イヤホンを購入しましたのでさっそくレビューさせていただきます。
ここまで時間が掛かってしまったのは「正直レビューは出来ればしたくない」という思いがあって、理由は「この価格帯の日本製品ではおそらくダメだろう」と言う事であまり日本製品を酷評したくなかったという事もあります。
皆様もよくご存じの通り、ここ最近の中華イヤホンの低価格攻勢は凄まじく、もはや日本の低価格イヤホンは風前の灯火となっています。
僕はもともとスピーカーの世界において「オールジャパン」で何処まで戦えるかを追求していたような人間ですので、出来れば日本製品を応援したいという気持ちが強いのですが、現実的には各個撃破され、戦線が崩壊していく中、信念のある会社がなんとか踏みとどまって戦っているというのが現状です。
しかも太刀打ちの難しい低価格イヤホンという戦場においてそもそも攻防戦にすらならず一方的に日本製イヤホンが敗退していくのを見たくなかったというのもあるのかもしれません。
ですがここ最近はKZの新作攻勢がいったんは落ち着いたようなので遂にお約束していたfinal E3000のレビューに嫌々ながら踏み込んだ次第です。
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【Final E3000 スペック】
ドライバーが6.4mmなので当初の懸念は低音に難がある可能性を感じたこと、特に重低音はほぼ期待できないと予想していました。
ただしハウジングは小型で軽い為、装着感は非常に良好。
この為、音が安定します。
バーンインは少なめで、約1時間も回せば十分でしょう。
低域がブーミーになるのでそれが取れるまで回して下さい。
【Final E3000 音質】
音を聞いた瞬間に不覚にも感動してしまいました。
僕にとっては珍しいのですが、しばらく耳から離さずにいろいろな曲を再度聞き込んでしまったと言えば分かるでしょうか。
いまもE3000を耳に嵌めてレビューを書いています。
帯域バランスはATR比ですこし量が少なくなります。つまりほぼベストバランスかわずかに多いかというレベル。
心配していた低音が出ないという問題も音を聞く限りでは感じられず、むしろよくこの小さなマイクロドライバーでこのレベルの低音が出せると感心する出来ばえ。
階調表現も良く、低音のエッジも十分に評価できます。
重低音はさすがにちょっと難がありますが、それでもこの低音の音量レベルでここまで出せれば一級品。
少なくとも中華によくあるブーストで誤魔化した低音ではありません。
ドライバーはニュートラルに近いと判断します。
なお、音がすこし明るめの色彩を帯びているのが大きな特徴でしょう。
このイヤホンの一般的な傾向としては「中高音域向け」ではありますが、低音もそれなりに良く出来ています。
全体的な音の感想はとても滑らかで明るめの音がする、ということになるでしょうか。
この辺は高域がフラットバランスの影響が大きいのかもしれません。
むしろかなりの玄人好みのプロ音質。
音のエッジもかなり良く出来ていてATRを遙かに超えているでしょう。
よく吟味された素晴らしい輪郭表現です。
残念ながらボーカルのフラットさはATRに一歩譲りますがそれでもまったく問題なく、妙な中域のピークとディップはチューニングでなかなよく潰してあると思います。
またボーカルなんですがかなりユニークな色彩が乗ってきます。
雑味とかそう言う類いのものではないのでとても独特な明るい色が独自に着色される傾向があり、ボーカル好きな方はじっくりと一聴する価値があると判断します。
なお、ボーカルにおいては一点言いたいことはパワーが足りない、という事になります。
コレは明らかに高域が足りないためで、ソプラノのパワーある声がかなり大人しくなります。
声がスッと伸びて天上に帰って行こうとするのにこのイヤホンはそれを止めてしまうところがあり、賛否分かれるところでしょう。
できればここでグッと歌い手の魂を表現して欲しかったのが残念な部分です。
メーカーは明らかに意図的にこういう音で聞いて欲しいというチューニングの範囲内の音ではあるのですが、ちょっと高域を大人しくしすぎた感は否めません。
ただこの滑らかな高いクオリティの音はこの高域のチューニングから生み出されるものかもしれず、一概に「大人しい」と否定するわけには行かないでしょう。
ソースによっては瞬間的にほんのわずかに音の眠さを感じることもあるのですが、これもおそらく高域の丸め方から来るものでしょうから耳が錯覚を起こしている可能性が高いと想定します。
全体的にはよく練り上げられた一級品の音で、時々微妙にサッと顔を覗かせる音の眠さがあるとはいえ、ボーカルのパワー以外のあらゆる場面でATRを超えていると云っても過言ではなく、新たなリファレンスとして指定しても良いくらいのイヤホンでした。
うーん、力強いパワフルなボーカルを再生したいという場合には残念ながら向きませんが、あらゆる用途で非常に滑らかでクオリティの高い音を再生するイヤホンです。
【Final E3000 まとめ】
いくつかのチューニング上の・・音作りの問題以外はなかなか見事としか言い様がありません。
確かに音楽を巧くデフォルメして聴かせるという意味ではサウンドピーツのB30は珠玉の出来ですが、どちらかというとその対極にある音作りで、一言で言えば明るめだが大人しいモニターチックな出力の仕方をします。
ですが、よくぞこの価格でここまで音をまとめてきたものだと一聴して驚くほどの出来映えで、こういう音は断じて偶然出てくるものではなく、明らかに苦心惨憺し、長い経験と音への真摯な態度がなければ絶対に到達できない音だと思います。
少なくとも「この音を聞いて欲しい」という信念がある音で、唯一無二のユニークな鳴り方をするのでイヤホンでは珍しいでしょう。
聴感上は明らかに高域がフラットもしくはハイ下がりの傾向を帯びる音なのですが、こういうチューニングを意図的に行い、それを統一して止揚できるのは高い見識が無ければとても出来ません。
もともと日本向けの海外スピーカーは高域のトゥイータを特別仕様にしたりして「キラキラ」とさせる訳ですが、日本人はそういった音作りを好むところがあります。
そういう環境でこういう風に地味ながらも見事に音をまとめ上げるとはfinalと云う会社の底力と音作りにおける信念を見た気がします。
それをわずか5000円程度の中華と真っ向勝負する価格帯で開発してくる、いわんや一歩も引かないどころか向かってくる中華に一矢報いる覚悟で善戦している。
正直に言うと、このE3000のバーンイン後の音を聞いてその音に対する確固たるfinalの信念が垣間見えるので驚愕したというのが正しいかも知れません。
派手ではないが非常に手堅く、高いレベルでまとめ上げられていて、かなりわかっている人が真剣に取り組まないとこういうシブい音は作れないと思います。
脱帽しました。
良い悪いは置いておいてもその信念を見事に音に結実させたのはお見事。
他のfinal製品にも手を伸ばしたくなる優れた日本のイヤホンで、日本にはfinalという会社があって中華相手の絶望的な戦場でも諦めずに立派に戦って居るぞと叫びたいくらいです。
評価は文句なしのもので、場合によってはリファレンスイヤホンの変更を検討しても良いレベルでした。
総合評価〇(リファレンス音質)
書ききれなかった補足事項の追記あります。
最後に記事を追加しておきました。
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