オーディオにおけるボーカルフラットについて
僕はよく「ボーカルフラット」という言葉を使います。これはボーカルの周波数特性が極力平らであってフラットで無ければならない、と云うことを言い表していますが、人の声に関わる帯域はキチンと作り上げないと声がおかしくなるというか暴れるわけです。
これは声の音色は関係なくて、単に周波数特性的なものだけを表しています。
人の声というのは人間が反応しやすいというか分かりやすい帯域ではあります。
声の音色というと特にBAを使ったときに注意しなければならないのですが、人の声が変質します。良く出来たDDと比較するとすぐに分かりますが、極端に声がおかしくなるものがあってBAでいい加減に設計したものに多くなります。
DDだとBAドライバほどおかしいものは少ないので、BAはより注意深く設計しないとダメでしょう。一例を挙げるとfinalのBAなどはハッキリと声色が異常だったりするものがありますが、もともとDDでもボーカルフラットを理解しているとは言いがたい音を出すのがfinalイヤホンなので、設計者が理解していないか知らないか、という事ではないかと思っています。
ボーカル周りをいかにキチンと作り上げられるかはメーカーの素の実力というかベースとなる基礎的な設計力というか、音作りする方の耳の実力が明確に現れます。
ちなみにモニター系リファレンスとして名高いメーカーはこの部分で絶対にミスを犯しません。とても丁寧に音を仕上げてきます。
もうひとついっておきますが、ハイエンドヘッドホンでもダメなものはたくさんあります。10-20万出しても出来ないメーカーは出来ません。こんな価格を出してボーカルが特性的に暴れやすく、発音がおかしくなりがちな物にお金を出す価値はありません。
色々聞いて思いましたが、音作りに利用できる範囲のボーカルフラットは限られた範囲の中にしかないので、多少暴れさせてもそれをちゃんと音作りとして利用しているのなら、それは許容範囲です。
デフォルメ系の音作りを目指しているブランドなら暴れさせるのも有りと云えばありなのですが、それでもある範囲の中に納めてこないとダメだという事です。
限界を逸脱してしまった音と云うのは、どういうものであれ設計ミスを疑わざるを得ないのです。それでもエンジニアの人は云うかも知れません。計測するとフラットになっていると。
もっと波形を拡大して必要な部分をミクロにみていく必要があります。声の帯域はこれを理解して潰していかないとダメなのです。やっているメーカーはキチンとやっているのです。
もちろんボーカルフラットだからといってそれで万事OKという事にはなりません。その上で自然な音色や温かみのある声色などを追求するべきなので、まずボーカル部分のベースとなる地点にあるのがボーカル帯域の必要な部分をいかに細かく平らに均せるのかということなので誤解しないようにして頂きたいものです。