【レビュー】SE-MASTER1 20万越えパイオニアのオープン型ハイエンドヘッドホン
パイオニアという会社は、いまはカーナビなどでも有名だが、もともとは「スピーカを作るために設立された会社」である。
ソニーはラジオなどから始まりいろいろと手を広げてスピーカなどもやってきているが、たいていの会社は道の途中で寄り道程度にスピーカなどもやっているのが普通である。
そんな中でパイオニアという会社は日本で唯一のスピーカを作ると云う目的のために設立された会社で、分業の進んだスピーカ生産の世界でドライバーからハウジングまで一貫して自社で生産できる世界に数社しかない会社のひとつである。
そのパイオニアもAVホームエレクトロニクス部門はONKYOに事業譲渡され、正直、もう何が何だか分からないほど複雑であるが、衰退するオーディオ業界で生き残るにはそれなりの覚悟が必要なのだろうと思う。
このハイエンドヘッドホンはおそらくONKYO傘下で開発されたものではないかと思う。
というのも本体のパイオニアのサイトを見てもハイエンドスピーカなどを生産するTADブランドしか記述がないからだ。といってもパイオニアの部門がそのまま身売りしたのなら人員などはパイオニアなのだろうと推測するが。
そのAV部門をパイオニアから事業譲渡された大元のONKYOも苦境にあえぎ、聞くところでは会社の存続に関わるほどの事態であると聴く。
オーディオ事業で会社を長く持たせることは非常に厳しい。
オーディオを扱う日本企業の多くが興隆を極めていたが、今は見る影もない。かつて多くの日本企業がハイエンドスピーカにまで殴り込んでいたものだが、いまやパイオニアのTADブランドがあるだけである。
いまイヤホンなどで好調な会社も数年後には影も形もなくなっていても何らおかしくない。それがオーディオというものである。個人的にはとても残念な気持ちがするが、才能も何も無いまじめな音を作り込むだけなら誰でも良いのでさして重要なことでもないだろう。
今回はパイオニアブランドのハイエンドヘッドホンの音を聞いてみるが、実売で20万を超えるのでまさに堂々たるハイエンドそのものだと思う。
ただし、ハイエンドにはハイエンドの音色がある。ここに挑戦することは自由だが、認められることはほとんど無い。多くの者が無駄に散華していった血塗られた戦場とも云えるだろう。
ちなみにパイオニア本体の超高級ブランドであるTADも世界ではまったく通用していない・・・。TADドライバそのものがダメだと僕は見ているが・・・
僕が聞きたいのは「価格に見合うだけの音」がそこから出てくるのかどうかだけだが、パイオニアのハイエンドはそれを見せてくれるのだろうか。