【コラム】 ベリリウムドライバーについて イヤホン振動板
イヤホンの振動板というとここ最近いろいろなものが出てきているようです。
格安系でもよく見掛けるのが「ベリリウムドライバ」です。
ベリリウムというと元々ごく限られたスピーカーの高域を担当する「トゥイーター」に使われることがありました。
今でもスピーカー用のTADドライバーはベリリウムです。
このベリリウムはもともとが「高域用」の素材で、その材質から放たれる音は「美しくて透明感のある」音がする物です。
これは一聴しただけで「ベリリウムの音だ」と一発で分かるほどに音が違います。
ではなぜこのベリリウムドライバーを各社が採用しないのかというとこのベリリウムには幾つか問題があります。
■製造時に「毒」を発生するので高度な設備のある専用の工場で無いとでは加工できない。
■高価
そもそもベリリウムは粉末にしないと加工できませんが、粉末にすると「毒」を発生するため、防護服を着用するなど極めて高度な設備が必要になります。
これほどの難しい素材が数千円のイヤホンに「ベリリウム・ドライバー」と云われてたくさん使われています。
このカラクリを想像するとおそらくベリリウムに多量の混ぜ物をした合金で、実際のベリリウム含有量はごくわずかだったりする可能性があるのではないかとも考えたりします。
これならベリリウムドライバーが格安である理由が分かります。
要するに「名前だけベリリウム」の可能性があると云う事です。
少なくとも僕がかつてスピーカーで聴いたベリリウムの音のするイヤホンは今のところ存在せず、ベリリウムと真逆の鈍った音がしていたりします。
また、おそらくと云うことでいえば「ベリリウムドライバー」を製造する工場は中国にもそんなにたくさんあるとは思えませんので、同一ドライバーを使ったイヤホンがたくさんあるのではないかとも思っています。
こうなると「音の違い」はハウジングの違いと言ってしまっても良いかも知れません。
さて、ここからはドライバーの素材についての余談となりますが、たとえばKC06Aなどは「生体複合膜ドライバー」などと言うよく分からないドライバーを使用していたりします。こういった「一見凄そうな名前の素材」にも注意が必要です。
なぜなら、経験上、こう言った特殊な素材のドライバーで「いい音がしたためしがない」ということがあります。
売り出しの宣伝文句としては使えますがそれ以上では無く、こう言ったドライバーはたいていの場合特性の狂った特徴的な音がしたりします。
だいたいよく考えればすぐに分かりますが、歴史の長いスピーカーの世界でも次から次へと新素材ドライバーが試されてきましたが、生き残っている物はほとんどありません。
このように「新素材」みたいなものはたいていが時の流れに揉まれると、いつの間にやら市場から消えています。
TADドライバーのように一流のメーカーがきっちりと作り上げたベリリウムドライバーは美しい音がしますが、それを中域と混ぜ合わせるのはこれまた至難の業となります。
音はハーモニーが大切で、ある帯域だけが素晴らしい音がしていてもしょうが無いのです。
イヤホンで云えばダイナミックドライバーを基本として、せいぜいがBA程度で十分でしょう。
その素材もごくありふれた一般的な物でも不足がなかったりするわけです。
それですらいまだに使いこなしができていないケースの方が多いわけで、新素材だの新ドライバーなどという言葉に騙されず、キチンと音を聞いて判断していく必要があります。
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