【コラム】 中華イヤホンの基本的なドライバーの音質について クール・ニュートラル・ウォーム
今回は中華イヤホンの基本的なドライバーの音質について、思うところがあるので書いておきます。
ドライバをはそれぞれ固有の音色を持っているものです。
たとえばクール系、ニュートラル系、ウオーム系などと言われます。
例えばクール系では非常に冷たい音がすることが多く、怜悧で鮮烈な音の感覚が有り、ウォーム系ではとても暖かく少し解像感が抜けたような音に感じる場合もあります。
これは好みの問題なのですが、スーパークールな音等というと音楽的に云えばあまり感心するような音はでてこない場合が多いような気がしています。
スピーカーで例を挙げればモニターオーディオやティールなどはクール系の音色が多く、パイオニアのS-1EXなどはスーパーウォームな音色を持っています。
中華イヤホンを既に50本以上は聴いてきましたが、ある特徴があります。
まず低音側がダイナミックであることからして「低域は強め」である、と云うことがひとつ。
もうひとつはドライバーの固有の音色が「ウォームに傾いている」事が多いと云うことです。
これは他の国産や海外大手のイヤホンを大量に聞かないと中華固有のことなのか判定できないのですが、とにかく中華格安イヤホンはほぼ全部ウォーム系の音色を特徴としています。
これがなぜなのかはよく分からないのですが、音を聞いて判断する限りにおいては、中華格安系イヤホンの固有の音色は「ウォーム/暖色系」だと思います。
せいぜいよくて「ニュートラル」で、ごくわずかに「ニュートラル寄りのクール」があるというところで、現実的に見れば「ウォーム系の音色」が多くを占めているのが現状です。
この為、中華イヤホンにおいては少なくとも格安系の音色は当てずっぽうでも「ウォーム寄り」と云っていればほとんど9割以上の確率で「あたり」となります。
おそらくと云うことでいうのなら、中低域側を担当するであろうダイナミックドライバーがそもそも「ウォーム系統」である可能性がとても高いのではないかと思っています。
帯域の狭いBAドライバーの受け持つ帯域がどこまでなのかは個々のハイブリッドドライバーでも違いますが、基本的に云えばBAドライバーはウォーム系ではないのではないかと思っているのですが、音を聞く限りは全体的な音質はウォーム寄りのイヤホンがとにかく多いのです。
基本的にウォームな音になると「解像度が下がったように聞こえる」場合が多いのですが、それはデメリットではありません。
逆にクール系の音色を持つと「聴いていられないような痛い音」を出すケースも多く、一見解像度が高めに聞こえると云う事にもなります。
なので一概に良い悪いと云うことではないのですが、一部の中華イヤホンを除くとそのほとんどがウォームもしくはウォーム寄りのニュートラル傾向を帯びています。
つまり音が暖かいのです。
特に最近のよく出来たデジタルDAPはもともとが「クール系の音色」を持っている場合が多いので、これらの機器を使っても音色がウォーム寄りというというのはそうとうにドライバー固有の音色がウォームなのではないかと思うのです。
ここから先はあくまで推測となりますが、中低域担当のダイナミックドライバーの帯域バランスが強めにとられている場合が多いので音色が釣られてウォーム系統の音に聞こえやすくなっているのではないかと思ったりもします。
要するに中低域担当の中華ドライバーがもともとニュートラルな物は少なく、音色としては「ウォーム」ではないのかと思うのです。
なので中華格安イヤホンの場合は固有の音色は「ウォーム」もしくは「ニュートラル寄りのウォーム」という前提で理解していてもあながち間違いではありません。
なのでニュートラルのイヤホンがあればそれだけで多少の価値が出てくることも確かではあると感じています。
つまり、以上のことを踏まえれば「クール系の音色を持つイヤホン」の特徴として「音がかなり鮮烈で解像感が高く聞こえる」ということであり、おそらく低域は少なめであると云うことが想像できます。
それが良い音かどうかは別として、中華イヤホンでは稀なケースとなるでしょう
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クールで鮮烈な音のDAPの代表格です。イヤホンなら低域も満足のいくレベルで鳴らせます。ヘッドホンは厳しいです。
【コラム】 イヤホン狂想曲 中華イヤホン・多ドラバブルの時代
イヤホンに関しては、今は完全なバブルの時代だと思っています。
そもそもマーケットは至る所でバブルが発生し、それが弾けますが、今はイヤホンとヘッドホンのバブルです。
当然のことながらバブルの時代は「不必要に価格が跳ね上がる」という現象が起こり、その製品の本当の価値以上の価格が付きやすくなります。
メーカーとしては「それでも売れるので価格を上げる」という当たり前のことを行うわけですが、行きすぎればいつかはバブルが弾けます。
おそらく近いうちにイヤホンのバブルは終わるでしょう。
物にはそれに見合う適正な価値があります。
その価値からどう考えても大幅に乖離しているのが現状のイヤホン、特にタドラといわれるマルチドライバをたくさん搭載したモデルです。
片側6ドライバや12ドライバなどをハウジングに詰め込んだモデルが驚くような価格で売られていますが、一説によればそのほとんどを購入しているのは「日本人」だという説を聞いたことがあります。
あくまでそのように人から聞いただけですが、あながち間違いではないと僕も思っています。
僕はそのような高価な中華イヤホンを購入する気はまったくありませんが、昨今のSNSなどであおられた人々の中には「音と云うよりも見せびらかしたいから」という理由でそういったモデルを購入する人も居るかも知れません。
僕個人の感覚から云えばイヤホンでハイエンドと云えばどう考えても中華製品なら4万程度が上限かなという漠然とした思いがあります。
なぜならゼンハイザーのヘッドホンの名機であるHD650がAmazonで45000円程度、そしてこれを超えるイヤホンはほとんど存在しないと言っても良いでしょう。
その価格を超えたイヤホンがあっても「音で超える」というのは至難の業だと思うからです。
いま中華の多ドライバー/マルチドライバー搭載機は平気で数万円の値がつき、4万越えも珍しいことではありません。
いくらBAドライバーの価格が高いといってもちょっとあり得ないのではないかと思うわけです。
中国人の平均月収は25000円程度と云われている中で、その平均月収の二倍近くになるイヤホンが数多く売られているというのもなんだか解せない話しです。
個人の耳に併せて作られるカスタムイヤホンならまだ話は分かるのですが、汎用品のイヤホンで無駄に価格をつり上げるために搭載したとしか思えないような片側6ドライバーや12ドライバーなどのイヤホンで、果たしてヘッドホンのHD650を音質で超えられるイヤホンがいったい幾つあるというのでしょうか?
おそらくひとつもありません。
要するに「あり得ない価格が付けられたイヤホン・バブル」としか思えないのです。
特にSNSではかなり煽る方も居るようなので、その輪の中に入れば、音を聞くのではなく、あり得ないようなポエムに耳を傾け、思わず散財してしまうと云う事も多いのではないかと思ったりもするわけです。
ですので、今は間違いなくイヤホンバブルの時代だと感じるので、SNSなどで煽られることなく、しっかりと「中華製」と云うことを頭の中に入れた上で判断してイヤホンを購入するのが間違いないと思っています。
少なくとも僕は1万円以上をだすのなら中華はたぶん選択しませんし、おそらくヘッドホンの方を普通に買います。
その方が遙かに良い音を楽しむことができるのは自明なことなので、周りに踊らされることなく、もうすぐおそらくブームは終わるであろうイヤホンバブルの時代を乗り越えていって欲しいと思います。
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【レビュー】 Magaosi HLSX 808 /Codio 021 ハイブリッドイヤホンM-1
【Magaosi HLSX 808スペック】
【Magaosi HLSX 808音質】
【Magaosi HLSX 808まとめ】
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【レビュー】 Tennmak dulcimer
【Tennmak dulcimerスペック】
【Tennmak dulcimer音質】
【Tennmak dulcimerまとめ】
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【レビュー】 KZ ED3 youth version (青少年/若者バージョン)
総合評価✕
KZ ED3の若者バージョンという意味不明なちょっと恥ずかしい名前のED3の別バージョンとなります。
ED3と同じような筐体で青や赤色のハウジングとなり、感度などが大幅に違っていたりします。ドライバ違いなのかチューニングの違いなのかは分かりませんが、恥ずかしい名前と若者を意識した恥ずかしい色が特徴のイヤホンです。
【KZ ED3スペック】
【KZ ED3音質】
【KZ ED3まとめ】
【レビュー】 KZ ZS1 /AS1211
総合評価✕
ダイナミック2DDのZS1となります。8mmと6.8mmの異なるドライバを搭載しています。
sure掛け専用のモデルとなっています。
【KZ ZS1スペック】
■モデルナンバー KZ ZS1
■ドライバー 2DD/8mm/6.8mm
■感度98db
■インピーダンス18Ω
■周波数特性20khz-20000hz
■コード長1.2メートル
【KZ ZS1音質】
2DDらしい分離の良さはイマイチ感じられませんが、ダイナミックドライバ2基なので音色の統一感は高いようです。
基本的に音がかなり明るく、帯域バランスも重低音強めですが、それほど悪い物ではありません。
KZの中では比較的に低域そのものは少なめでバランスは良い方です。
低音の階調も出てくるのですが、重低音がかなり多めに量が出てくるのでソースによっては混濁しがちとなります。
高域側の尖りも無く、ボーカルもKZの中ではATEクラスのレベルの高さを感じます。
ここまでは意外に評価が高いのですが、なぜか全体に妙な雑味が被さってきます。
このおかげで個々の帯域だけで見るとなかなかの音がしているのにもかかわらず、ひとつの音楽としてこのZS1を聴くと不満が大きくなります。
特に問題は重低音域の量がかなり多めに出てくるので、濁りやすい音が更に混濁しがちになります。
ZS1の特徴を一言で言うのなら「明るく質の高いボーカル」と云うことに尽きるでしょう。
【KZ ZS1まとめ】
おそらくこのZS1はハウジングの方に問題があるのではないかと感じています。
これはハウジングの共鳴というか、箱鳴りというか、とにかくハウジングの音で音質に決定的な濁りが生じています。
全体的に感じる妙な雑味のせいで明るくも前に出るボーカル域のレベルの高さが台無しになってしまっています。
とても惜しいのですが、低音少なめのソースで明るく質の高いボーカル専用ならこのイヤホンの最も美味しいところを味わえると思います。
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【コラム】 解像度とは何か? ヘッドホンとイヤホンを考える
ここから先は僕の勝手な解像度についての見解です。
僕も昔は解像度を追求していた時代がありました。
単純に聞こえない音が聞こえる、と云う理由が最も大きかったのです。
後から思えば「初心者ほど解像度を追求する」という思いが強いのですが、ある意味とても「分かりやすい部分」でもあると感じています。
経験が少なくても「解像度」だけは比較しやすいと云うこともあります。
僕は元々がスピーカー出身ですが、テスト用のチェックディスクを使って購入したスピーカーの音がどれだけ細かく聞こえるかよくテストしていたものでした。
ですが、僕が解像度の追求を辞めてしまったのは、ヘッドホンを購入した頃からです。
その頃、どうしても欲しかったSTAXのフラグシップである007の音を視聴しにいき、そのあまりの凄まじい解像度と滑らかな美音に衝撃を受けました。
STAXからはいままで聞くことの出来なかった細かい音が簡単に出てきたのです。
たとえば僕がよく聴くメサイアのディスクなどこれまで何十回も聴いてきたものですが、このディスクに録音されたブツブツという異音まで鮮明に再生してしまいました。
この異音を最初に聴いたときに007の初期不良かと思ったものです。
ところが当時使用していたスピーカーでそのディスクを聞き返し、スコーカーに耳を押し当てるようにしてチェックしてみると、確かにブツブツという異音が録音されているのが確認できました。
何のことはない、その異音はあまりにも録音レベルが低いかすかな音なので数メートル離れて聞くスピーカーでは再生の難しい音だったのです。
もちろんもっと突っ込んで云えば、そんな異音を鮮明に再生する理由はありませんし、音楽では無く録音時のミスのような音まで明晰に再生する理由もありませんが、確かにこういう細かな音を解像度高く聞かせてくれるヘッドホンは確かに優秀です。
耳のすぐ近くで鳴らすため比較的にヘッドホンは解像度という点ではスピーカーより遙かに優れています。
解像度という点では静電型のSTAXに適う再生機器はそうそう世の中にはありませんが、だからといって世の中の定評のあるスピーカーが007よりも劣っていると云うことはありません。
部分的にはヘッドホンはスピーカーに勝てますが、結局のところ、音楽を美しく鳴らすという点ではスピーカーに勝てると云う事はほとんどありません。
スピーカーはSTAXほどの解像度が無くても素晴らしい音楽を、音色を響かせてくれます。
むしろ僕は思ったのです。
ヘッドホンなどは「聞こえすぎる」のが難点だと。
ここまで聞こえすぎてしまうといわゆる「優秀録音盤」といわれるソースそのものがよく練り上げられた音源を持ち込まないと音楽を聴いていられなくなったりします。
写真に例えるのなら、「解像度」が高すぎると女性が美しく見えない、というのと似たような物かも知れません。適当にぼかした方が美しい場合も多いのです。
(この美しくぼかすと云う作業をうまくやってくれるのがアナログのプリアンプです)
特にここ最近のデジタル機器はそこら辺のポータブル機器でも「解像度が高すぎる」ので、アナログのような柔らかい傾向の音ではなく「とても荒れた音」をそのまま出力する傾向があります。
傾向があると云うよりも「音を整理せずにそのまま出して」しまいます。
イヤホンなどでは再現力のグレードが低いのでよくよく聴かないとこの荒れた音が分からなかったりしますが、性能の高いヘッドホンあたりだともう既に聴いていられないレベルの音を出力します。
いまのデジタル機器ならアンプ側で失われるような音はほとんどありません。シールドの強い良くないケーブルをなどを間に挟むと細かな音は簡単に消えてしまいますが、余程の粗悪な機器で無ければDACチップから出力されるところまでに人間の可聴帯域上の有効な音が消えてしまうなんて事はほぼなかったりします。
要するにここ最近のデジタル機器では「解像度が高すぎ」て問題を起こしているのです。
これはもっとハッキリと言うといわゆるフルデジタルアンプの大問題なのです。
昔、解像度を追求した人たちの間で「CDプレイヤーからの出力」をそのままボリューム付きのパワーアンプに直結するのが流行したことがありましたが、あっというまに廃れてしまいました。
理由は簡単です。
解像度はかなり高くなり、1枚ベールを剥いだような音が簡単に出てくるのですが、音が荒れて音楽が鳴らなくなるので辞めてしまったのです。
ところが昨今のデジタルプレイヤーにヘッドホンをさすと正にこの荒れた音がします。
こういう荒れた音は音楽ではないと、僕は思うのです。
例えば解像度の高い機器で音を聞くと「パン」という音が「パァン」と聞こえます。
この「ァ」の音が聞こえるかどうかでその機器の価値が決定するわけでは無いのです。
本当ならこの音を全部再生しながらアナログのプリアンプを通したような「整理された音」が一番良いのですが、これはなかなか至難の業でそういう音にはそう簡単にはたどり着きません。
【解像度まとめ】
そういうわけですので、今のデジタルアンプもしくはスマホレベルでも中華のどうしようもないレベルの機器で無ければ信号としてなら解像度が足りないなどと云うことはなく、むしろ解像度が高すぎて音が荒れると云う問題を引き起こしているのが現状だったりします。
ただし、低音側の解像度は電源部にて依存しているので、これはデジタルプレイヤーの電源部の問題です。
この点においてはアナログ的な物量投入が効いてくるのでポータブルのDAPなどではそもそも低音の解像度が十分にでてきません。
イヤホンならまだしもヘッドホンくらいになると駆動力のあるアンプを通さないととても低音の帯域は表現できなくなってきます。
低音が駆動できないと釣られて中高音域まで音の解像感が下がります。
この点に於いては解像度では無く必要なのは「駆動力」です。
これは単純にワット数とは関係なく、ドライバーの制動力が問われるところとなります。
このようにアンプ側での信号という事だけなら解像度は既に十分なのです。
では、ヘッドホン側では解像度が落ちないのかというとそんなことは無く、ここで問題となるのは音数が多くなるとドライバーが音を上げて音が混濁するという現象が起こります。
こうなるとある帯域の音が消えてしまいます。
これは決して好ましいことではないので、ヘッドホンやイヤホン側にも性能の高いドライバーを要求されますし、共鳴音で音が消えてしまわないようにハウジングも正しく設計する必要があります。
ここで今までの事を整理すると、解像度を高めるためにはアンプ側では信号の品質よりもむしろ駆動力の方が余程重要なこと、またヘッドホンなどの再生機器側に音の混濁しないドライバーとそれを活かす設計のハウジングが必須だと云う事です。
ただし、例えバカみたいに解像度の高い機器を使っても音楽が鳴るかどうかはまた別問題です。特に最近のデジタルプレイヤーの解像力だけが異様に高い音には注意する必要があると云う事です。
僕個人はパワーアンプの問題で失われる低音域の表現とドライバーやハウジングで音が混濁して消えてしまうと云う事にはまったく納得はしていませんが、高い解像度という点ならSTAXのヘッドホンで事足りるので、いまは解像度一辺倒では無く、むしろ音のハーモニーとか音色の方に興味があります。
どうでもいいような細かい音を必死になって聴くよりも、全体として音楽を鳴らす事に興味があります。
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【レビュー】 Little Dot MK2 MKII 6J1 X2 6N6 X2 ヘッドホンアンプ/真空管プリアンプ/
総合評価✖
OTLの真空管アンプであるLittle Dot MK2です。
OTLなので出力トランスは搭載せず、比較的真空管の音が出やすい傾向があります。
トランスの音が出ないため、真空管アンプの中では回路構成が半導体に近いアンプとなります。OTLですと音質的には半導体の音色に近くなると云われていますが、こちらのLittle Dot MK2は部分的にとても美しい音色がでます。
こちらは一言で言うのなら中域がとても優しく甘いアンプだとはいえるでしょう。
【Little Dot MK2スペック】
■シングルエンドプッシュプル クラスA OTL
■周波数特性 20HZ - 50000Hz
■対応ヘッドホンインピーダンス
【Little Dot MK2音質】
まず付属の真空管で評価しています。
こちらは交換前提で考えておくべき物ですがとりあえずの試聴なら特に問題のないものでした。
ヘッドホンアンプとしての使用ですが、一言で言うのなら「価格なりの」の性能だと言えます。
APPJ1502Aなど比較すると、もう中域の質感は圧倒的で、この帯域の色艶はこちらのLittle Dot MK2の最大の特徴と言ってしまっても良いでしょう。
とても良い質感で、ちょっとした「真空管の艶」がボーカル帯域に載ってきます。
中域のエッジもわずかに丸まるようでとても好ましいです。
テストする限り高域側も鈍るようなことはないので特に不満はないとおもいます。
中低域側の駆動力は真空管なのでこちらも不足を感じるようなことは一切なく、HD650をキチンと鳴らせるだけの実力があり、実際に音を聞いてもDP-X1よりも一段上の低音の駆動力を見せてきます。
低音もボケること無くしっかりと出してきますので、真空管アンプにありがちな低音の階調不足ということもなく、低音域の表現力という点に関してはまったく問題ないアンプだと判断しています。
特にポータブルのデジタルDAPを使用している人は、こちらの低音を聴けば単純な出力ワット数ではない本当の意味での駆動力というものが具体的に実感できると思います。
ノイズもほぼ感じられず、それでいてこの中域の音色は高く評価しておきます。
ただし、世の高級なトランスを搭載した真空管ヘッドホンアンプと比較すると背景はちょっとウルサいです。
(ちなみにこのざわつき感はインピーダンス的な相性の問題では無く、安い真空管アンプ特有のものです。
ただし、安くてもこのようなモヤモヤ感がない真空管アンプもあるので、一概には言えませんが、ちょっと許容範囲を超えてしまうことはいえます。
また分離や音の解像度にはちょっと問題があるようで、背景のざわつきと共に注意が必要です。
ちなみにヘッドホンアンプとしてつかう場合は前面の3.5㎜端子では無く分岐ケーブルを使用して背面のRCA出力端子から音を拾った方が音質はわずかながら向上するようです。
【Little Dot MK2プリアンプ】
純粋なプリアンプとしても使用可能なアンプですが、こちらの「プリアンプとしての実力」はプリメインアンプのプリ部程度の実力と言ってしまっても良いと思います。
なのであまり性能が高いものではなく、こちらを入れたとしてもセパレートのプリアンプを入れたときのように圧倒的な音質差を望むのは難しいです。
特にスピーカーで使用すると背景のモヤモヤ感や荒れた音もあまり整理せずにそのまま出力してしまう傾向があるので音の変化にシビアなスピーカでプリアンプとして使用するにはちょっとレベルが低いプリアンプです。
【真空管の交換について】
付属はどうもダメだろうと思います。
僕はまだ変えていませんが、エッジの出方がおかしいのでなにか別な真空管に変えて変化を試してみるべきだと思います。
【LittleDOT MK2まとめ】
電源コードを含めてフルセットで販売されています。
同じストアのAPPJが電源コード無しで販売されているので、そこから比べると別に買い足す物が2P変換プラグだけというのはお手軽で良いものです。
ボーカルに載るこの真空管のわずかな甘い音色だけでも聴く価値がありますが、それでも色々な事を総合的に考えると「お金を出す価値」があるかどうかは極めてアヤシい。
特に駆動力を中心とした低音の表現力は昨今のデジタルアンプではなかなか出せないものとなりますが全体的な能力が悪すぎるところがあり、エッジの出方や解像度、背景のざわつきなどを勘案すると非常に厳しいアンプだと言えます。
贅沢を言えば真空管特有の「背景のざわつき」に価格の安さが出てしまっているので音の雑味としてかなり明確に現れてしまうのが「価格」を感じさせてしまうところでしょう。
アナログの場合、価格=性能のようなところがあるのではっきり申し上げてこの価格で「良い音」にたどり着くのは極めて厳しい。
ちなみにインピーダンスはハイ・ミドル・ローと内部のディップスイッチを開けて変更します。これが少し面倒なのですが致し方ないでしょう。
ヘッドホンの対応能力も高く、価格の安さにも関わらず楽しめる音質と中域に現れる特徴的で妖艶な真空管のツヤに点数を付けておきます。
2万以下では、真空管の艶がボーカルにわずかに載るアンプとして評価すべき性能があると思われるOTL真空管アンプだと思います。
価格優先で探している方にはオススメしたいところではあるのですが、真空管アンプとして基本的な能力が及第点に達していないとはいえます。
性能優先でとにかく良い音で楽しみたいという方はもう少し予算を増やして別なメーカーから選択した方が良いかも知れません。
ちなみにこちらのアンプはイヤホンでは無くヘッドホンでテストしています。イヤホンの方はデジタルアンプの方が結果が良いのでこういったアナログアンプを選択してはいけません。
Little Dot LD1+ I+ 真空管6JI ハイファイヘッドホンアンプ 真空管アンプ プリアンプ | ||||
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Little Dot MKIV MK4 SE ハイファイヘッドホンアンプ 真空管アンプ プリアンプ | ||||
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【コラム】 ベリリウムドライバーについて イヤホン振動板
イヤホンの振動板というとここ最近いろいろなものが出てきているようです。
格安系でもよく見掛けるのが「ベリリウムドライバ」です。
ベリリウムというと元々ごく限られたスピーカーの高域を担当する「トゥイーター」に使われることがありました。
今でもスピーカー用のTADドライバーはベリリウムです。
このベリリウムはもともとが「高域用」の素材で、その材質から放たれる音は「美しくて透明感のある」音がする物です。
これは一聴しただけで「ベリリウムの音だ」と一発で分かるほどに音が違います。
ではなぜこのベリリウムドライバーを各社が採用しないのかというとこのベリリウムには幾つか問題があります。
■製造時に「毒」を発生するので高度な設備のある専用の工場で無いとでは加工できない。
■高価
そもそもベリリウムは粉末にしないと加工できませんが、粉末にすると「毒」を発生するため、防護服を着用するなど極めて高度な設備が必要になります。
これほどの難しい素材が数千円のイヤホンに「ベリリウム・ドライバー」と云われてたくさん使われています。
このカラクリを想像するとおそらくベリリウムに多量の混ぜ物をした合金で、実際のベリリウム含有量はごくわずかだったりする可能性があるのではないかとも考えたりします。
これならベリリウムドライバーが格安である理由が分かります。
要するに「名前だけベリリウム」の可能性があると云う事です。
少なくとも僕がかつてスピーカーで聴いたベリリウムの音のするイヤホンは今のところ存在せず、ベリリウムと真逆の鈍った音がしていたりします。
また、おそらくと云うことでいえば「ベリリウムドライバー」を製造する工場は中国にもそんなにたくさんあるとは思えませんので、同一ドライバーを使ったイヤホンがたくさんあるのではないかとも思っています。
こうなると「音の違い」はハウジングの違いと言ってしまっても良いかも知れません。
さて、ここからはドライバーの素材についての余談となりますが、たとえばKC06Aなどは「生体複合膜ドライバー」などと言うよく分からないドライバーを使用していたりします。こういった「一見凄そうな名前の素材」にも注意が必要です。
なぜなら、経験上、こう言った特殊な素材のドライバーで「いい音がしたためしがない」ということがあります。
売り出しの宣伝文句としては使えますがそれ以上では無く、こう言ったドライバーはたいていの場合特性の狂った特徴的な音がしたりします。
だいたいよく考えればすぐに分かりますが、歴史の長いスピーカーの世界でも次から次へと新素材ドライバーが試されてきましたが、生き残っている物はほとんどありません。
このように「新素材」みたいなものはたいていが時の流れに揉まれると、いつの間にやら市場から消えています。
TADドライバーのように一流のメーカーがきっちりと作り上げたベリリウムドライバーは美しい音がしますが、それを中域と混ぜ合わせるのはこれまた至難の業となります。
音はハーモニーが大切で、ある帯域だけが素晴らしい音がしていてもしょうが無いのです。
イヤホンで云えばダイナミックドライバーを基本として、せいぜいがBA程度で十分でしょう。
その素材もごくありふれた一般的な物でも不足がなかったりするわけです。
それですらいまだに使いこなしができていないケースの方が多いわけで、新素材だの新ドライバーなどという言葉に騙されず、キチンと音を聞いて判断していく必要があります。
アーバンユーティリティ ハイレゾ対応 ベリリウム振動板採用 カナル型イヤホン (マイク付き) 簡易パッケージ ケーブルバンド付き UEHE-EP1
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【レビュー】 KZ EDR1
総合評価〇
KZ社のEDR1となります。
KZの中ではED9が高く評価されていますが、今回、聞き比べた結果ED9の星を落とし、EDR1の評価を出しておきます。
ちなみにこちらのEDR1とED2は見た目で区別がつきません。
音は違うようなのですが実際のところどうなのかは明確ではありません。
【EDR1スペック 】
■モデルナンバー KZ EDR1
■ドライバー 1DD
■感度108db
■インピーダンス18Ω
■周波数特性20khz-20000hz
■コード長1.2メートル
【EDR1音質】
まず適正帯域バランスから云えば相変わらずの中華のKZで量が多めです。
KZの中でも特に低音が多めのED10の低音を少し量を絞ってエッジを明確にしたようなイメージです。比較するとED9よりも低域のバランスは良いと思います。
低音のエッジの描き方も十分に評価できます。
重低音も出すぎるくらいに出てきます。
ボーカルの質はED9の攻撃的なエッジを薄めてちょっと地味にした感じです。
といっても今回はED9を比較対照としたのですが、後からATEを持ち出すとATEよりも高域側のエッジが立ち気味なのでボーカルの質感は悪くは無いがATEのボーカルグレードから比較すると若干落ちるというレベルです。
ようするにこちらのEDR1のボーカルの質感はKZの中でも平均より上のレベルにはあるといえます。
惜しいのは高域側のエッジがわずかに立ち気味なところだと思います。
また、音数が多くなると全体的にすこしざわつきます。
【EDR1まとめ】
KZのATEあたりに通じるエッジのマイルドさがあります。
KZの中でも音は明るめの部類になりますが、低音もかなり強めです。
輪郭はよくエッジはボケません。
量の多さは別として比較的に低域側の性能は高めです。
帯域バランスで見ればKZらしい低域寄りの音ですがボケ感も少なく、階調表現能力もかなり高いです。
中域の質感も悪くなくATEやATRに通じるボーカル域の質感を持っています。
ATEよりも音はわずかに明るい音です。
音質のところでも述べたようにボーカルの質感だけならATE/ATRには適いませんがKZの中の立ち位置としてはかなり上位に入るとみて良いでしょう。
こちらのEDR1はKZの中では意外な実力機となります。
ED9よりも間違いなくこちらの方が音質は上だと思いますので、高域側のエッジの尖りは唯一気になりますが、性能は高めです。
ATEあたりを少し華やかにして高域側を立たせた物がEDR1の立ち位置となりますのでKZのイヤホンシリーズの中でも実力高めです。