【コラム】リケーブルでの音の変化について
今回、Twitterのフォロワーの方とやりとりしていて非常に興味深いリケーブルでの音の変化という現象に出会ったのでそのことについて書いておきます。
基本的に僕はケーブルで音が変わる、というのはプラセボだと言ってきていますがそのことについては大筋ではまったくゆらいではいません。
ですが、今回その方にはTwitterからリプライを頂いたのですが、もともと非常に冷静にイヤホンの評価ができる方でプラセボとは無縁の方だと思っていました。
その方が「あるケーブルで微妙だが明らかに高域が違う」とのことでした。
普通、プラセボレビュワーがそのようなことを申しても「またか」と完全無視で終わるのですが、その方の今までの発言を考えると「どうにも無視できず」変化のあるケーブルを直接譲っていただいて確認することにしました。
この時点でこのケーブルについて分かっていることは以下の点です。
■微妙に高域が尖る
■2ヶ月かけて検証した
■検証したイヤホンは1DD+3BAのタイプ
と云うことです。
微妙だが間違いなく高域に何らかの影響がある、とのことでこのケーブルにすると「高域が刺さる」とのことでした。
ケーブル到着
さて、その2日後には問題のケーブルが到着したわけですが、実はもう1本比較検討用にケーブルを付けてくださったのでそちらと比べながら聞き込みました。
こちらの環境はDP-X1にTennmak piano(1DD)mmcxを使用して検証しました。
MMCX対応でまともなイヤホンがこれしかなかったことと、1DDなので余計な相性問題に悩まされずに済むためです。
都合3日間にわたってテストソースを流して比較検討した結果、この組み合わせでは「音の変化は一切無い」という結論を出しました。
そして、更に次の結論に達しました。
リケーブルの効果とは
以下の条件が合致したときのみリケーブルで音の変化はある、という事です。
■ケーブルとBAドライバに相性問題がある
■主に「高域」で変化が大きくなる
■かならず起こるわけではない
■基本の周波数特性の流れは変わらない
元々ケーブルとBAドライバは「相性」がありますが、この変化が「人間の耳で検知可能」かどうかと云う事に対しては懐疑的でした。
ですが、今回の一件で状況を良く検討した結果としてBAドライバモデルのイヤホンの場合、高域が知覚可能なレベルで変化する事を認めざるを得ません。
ただし、基本的な音質は変わりません。
特に相性が悪い場合にのみ高域側のエッジが「暴れ」たりする場合があり、これが「音の痛さ」になって微妙だが明確に現れる場合があるという事です。
リケーブルのまとめ
正しく状況を理解していただきたいのですが、BAドライバでなければこの変化は起こらず、またBAドライバでも変化が小さくて知覚不可能なケースの方が多いと思います。
特に相性が悪い場合で耳の良い方なら気がつくレベルの変化である、と云うことです。
基本的な音質に変化はないので深く聞き込まれる方でなければ神経質に気にする必要はないと考えています。
ただ使っているお気に入りのBAイヤホンの高域が刺さる場合、リケーブルを試してみる価値はあると思いますが、好ましい方向に変化するかはまったく不明なため、積極的に試すような事ではありません。
本来こういったことはリケーブルで調整するようなことではなく、イヤホンそのものの地力を追求するべき事です。
今回はこのような現象にあたり特に相性が悪い場合は「知覚可能なレベルでBAドライバの高域のエッジ」がケーブルで変化する事を知ったわけですが、元々そのようなことは測定で検証されていたりしました。
ですが、人間の耳で聞いて分かるのか、と云うことはまた別問題だと認識していたわけですが、今回のフォロワーさんとの話の中で「特に相性が悪い場合」は耳で聞いて分かるということを書いておきます。
最後にもう一度まとめておきます。
■1DDイヤホンではリケーブルでの音の変化はない
■BAドライバとケーブルには抵抗値の問題で高域側に相性問題が発生することがある。
■これによって驚くほど音が変わる等という事はないが、高域のエッジに何らかの微妙な変化をもたらす場合がある
ということです。
以上がフォロワーさんと検証した結果のリケーブルに対する今のところの僕の結論とさせて頂きます。
追記
BAドライバ搭載機のリケーブルの場合、必ずメーカー付属のケーブルの高域を基準として聞き込みを行うべきです。
それで音作りがなされている為です。
リケーブルを行う場合、もし付属ケーブルに対して良からぬ変化が高域側に見受けられたら、そのケーブルは残念ながら使うべきではありません。
catwalk1101earphone.hatenadiary.jp
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