【レビュー】KZ AS10 KZ初のフルBAドライバ中華イヤホン
KZ初のフルBAドライバ機となります。
片側5発のBAでもちろん低域も含めてバランスドアーマチュアドライバによる駆動方式で音を鳴らします。
今回は価格がほとんど変わらなかったのでアマゾンで購入しましたが、その際つい勢いあまってアマレビューを見てしまうとそこには「低域が籠もる」という意見が散見されたため、購入は気が進まなかったのですが、お約束なので行ってみた次第です。
KZは相変わらずしょうもないイヤホンを定期的に出してくるので「低域が籠もっていてもおかしくは無い」という事は言えます。
最近ではZSRのレベルの低い低域やZSAの超ブーストの掛かった低域など、とんでもないイヤホンを平気で出してきますので・・・
【KZ AS10スペック】
■モデルナンバー KZ AS10
ZS10よりも装着感は上がっているように感じました。
音量はかなり取りやすいイヤホンです。
予想通りでしたがBA機なのでバーンインはほぼ必要ありません。
「ほぼ」というのはせいぜい5-10分も鳴らせば十分です。
BAドライバなので箱だし直後から「ドライバ自体」は非常に安定しています。
気になったのは箱出し直後はBAの低域ドライバにてわずかに音が甘くなるのですが、まぁ10分も鳴らせば安定してきますので「バーンインはほぼ不必要」」です。
音を聞いていて思いましたがそもそもバーンインが必要なのはDDであってBAは最初から落ち着きの良い音を出してきますのでこれが確認できただけでも大きな収穫でした。
と云う訳なのでフルBAドライバイヤホンでエージング等と騒いでいる人はますます何を聞いているのかわかりませんが・・・。
これだけ安定感のある音を出しているのにエージング?とはと感じています。
もちろんBAドライバというのは問題だらけなのですが、バーンインの効果に関しては限りなく少ないのは大きな特徴のひとつだと思います。
【KZ AS10音質】
このAS10イヤホン、ハッキリ言うと出来はかなり良いです。
特に優れた中高音域をもっているのでここがバッチリ嵌まった曲を聴くとかなり幸せになれます。
この中高音域だけ取れば歴代のKZイヤホンでも相当に出来が良く、かなりチューニングを煮詰めたと思われます。
音はわずかに明るめだが、音に勢いが少ないのでニュートラルに近く聞こえます。ドライバーもほとんどニュートラルに近い若干のウォームで、曲によってはスーパーウォームに変質します。
帯域バランスはいつものKZと比較するとだいぶ少ない。低音量は+5.0程度でしょうか。録音時適正レベルにかなり近い。ただしBAによる低音なのでちょっと問題があるかなと感じています。
ハウシングで稼いでいるのか低音がいつものKZよりかなり少なめだがとにかくブーミーです。低音がかなり緩いのでその点は注意を要します。ただしBAのみで出力しているにしては低音域は意外に下の方まで出ています。ブーミーですがチューニングでうまくこなしている音だと思います。低音域は階調表現も不明瞭なところがあるので大きな期待は禁物でしょう。
特筆すべきはとにかく中高音域のチューニングの良さでしょう。
アコースティックな曲ではかなり良い状態で鳴らしてきますのでちょっと驚きました。特にエッジの出来はこれまでのKZすべてを含めて最も出来が良い。
BAハイブリッドイヤホンにありがちなクロスオーバーの不具合や音色の不統一が一切無く、かなり気持ちよく音楽を聴くことが出来るので一聴の価値があると判断します。
この辺のチューニングは相当に練り込んであると言わざるを得ません。
ボーカルのフラットさ加減は中の上。
解像度もかなり高く、細かい音の表現力はかなりの実力。少しボーカルが変色してしまうのですが、エッジは柔らかく非常に良い。クリアなクール系と比較すると音がボケ気味に感じるのですが、これはそういう聴き方をするイヤホンのチューニングではありません。
ただ、このAS10はちょっと性能がピーキーなところがあるので「クセが非常に強く出る」一面を持っていて、合わない曲を出力するとなぜか一気に音質がダウンします。
そのあたりを中心に書きますと・・・・・
第一に最大の問題であり、ほぼ全ての不満の元凶は低域を受け持つBAドライバーが発生源ということです。
低域が激しく重なる曲、もしくは低域の一部帯域を出すソースを鳴らすと劇的に音質が低下してしまう場合があります。
これの原因は今のところよく分からないのですが、とにかく問題のない曲では非常に良いのですが、一部の曲を鳴らすと途端に音質が劣化し、聞くに堪えない音を出します。
アマゾンレビューで「音が籠もる」と書かれていますが、まさにそんな感じではないでしょうか。
ただ籠もっているわけでは無く、「籠もったように聞こえる」というだけなのですが、低域が激しい曲で必ず起こるわけでは無く、低域が少ないソースでも合わない曲によってはかなり音が劣化します。
何でもない曲では何でも無いのですが、とにかく低域のBAドライバが稼働を始めると曲によっては妙な音質劣化を引き起こすところがあり注意すべきでしよう。
また低域も重低音は非常に鳴らしにくく、これはBAドライバの性能的な限界だと思われます。
低音の出方もとても不安定で、良い時と悪いときの差が激しいところがあります。
ただしキチンと出ているときの低音のエッジや出方はBAとして考えれば十分によいものです。
ここからはちょっと中高音域の音質について書いておきます。
finalのE3000も同じような傾向をもっているのですが、ボーカル帯域にかなり独特の色が載ります。
なのでこのボーカルの音が正しいということよりも、雑味ではないのでこの音の色のりと云うかカラーを積極的にオーディオとして楽しむと云うことが必要だと思います。
【KZ AS10まとめ】
中高音域の出来具合だけでいえばKZイヤホンの範疇では一線を画す出来映えといっても良いかもしれません。
ハイブリッドによる妙な音のチグハグさもなく、音色の統一を含めて見るべきところの多いイヤホンです。
これなら低域をDDで構成するよりもフルBA機で攻めた方がおそらく「イヤホンの可能性」という点では余程見込みがあるでしょう。
これまで僕が感じていたハイブリッドBA機の不満がかなりの部分解消している音がしているので、中高音域のこのチューニングは評価したいと思います。
逆に言えばやはりDDとBAを混合する、つまりハイブリッドイヤホンというのは音質的にかなり厳しいと結論を出さざるを得ません。
どうせイヤホンを作るのならドライバはDDかBAかは統一した方が音のためには良い、ということです。
ただし全BAドライバ搭載による特徴として「低域のパワー感」というものは確実に失われるのでこの独特な感じ、いわゆるヘッドホンで云う所の静電型/コンデンサータイプの音の出方に近いのでこれは「慣れる」しかありません。
だとしてもコンデンサーヘッドホンよりもイヤホンであるだけに低域はもう少しパワーを感じるのでこれはこれで有りでしょう。
それに低域にBAを実装しておいてDDのような音をさせるというのも無茶な話しなので、もともと動作原理がまるで違うものということもあって、これは低域の出方に違いが出て当たり前の話しです。
それにしても予想以上に出来が良かったのが今回のAS10で、フルBA機の未来を垣間見せてくれたと云う意味では購入を推奨しておきます。
今から購入するのならZS5か、もう少し予算を増やしてAS10というのが良い選択になるでしょう。
最後にもう一度言っておきますが・・・BAドライバで低域を出しているのでその点からくるパワー感の無さは致し方ないことと言う事、それから低域のBAが稼働しだした時点でなんらかの条件が揃うと音質の劇的な低下を引き起こす場合があるので、その点には注意を促しておきます。
色々と書きましたがそれでもこのAS10の中高音域のチューニングには高い可能性を感じます。
非常に性能がじゃじゃ馬なところがあるイヤホンで機嫌の良いときと悪いときで劇的な音質差があったりして扱い方が難しいのですが、中高音域のチューニングはこれまた妙なカラーがのったり乗らなかったりするとはいえ相当に出来の良いイヤホンです。
低域の少ない曲、もしくは合うソースを鳴らすのなら素晴らしい音を出します。
このフルBA機は予算に都合がつくのならぜひ1本持っておくべきでしょう。
総合評価〇
catwalk1101earphone.hatenadiary.jp
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