イヤホンのサウンド定位と脳内補正
定位についてはこれまで何度もお話ししていますが、今回は「実例」を交えてどれくらいそれが「いい加減」なものかを簡単に書いておくことにします。
ブログをよく読んで頂いている方なら、僕が「イヤホンでの定位」というのをほぼ否定していることは分かっていただけているだろうと思います。
イヤホンにおいては「前方展開」しかありませんし、ザックリと左右と脳内中央、ようするに前方左右180度に水平にしか展開しません。
ところがこの定位に関して「訳の分からない事を言う」方が多く、イヤホンでそんなことを語られると何のことやらと思ったりするわけですが、これも単なる「錯覚」や「思い込み」の類いだと申し上げています。
今回はこれを日常的な実例を挙げて説明しておきます。
まず、目の前にテレビを思い浮かべてください。
電源を付けると色々な番組が放映していますが、何でも良いです。ニュースでもアニメでも映画でもドラマでも、そういった番組が放送されていることを思い浮かべてください。
現実にテレビを付けても構いません。
通常、テレビのスピーカーは真下か左右に取りつけられています。
仮に下側にスピーカーがある場合、セリフは下から聞こえてきますが、テレビを見ながらそんなことを気にしたことのある人はいない筈です。
キチンと画面の中の人が喋っている位置から再生されているように聞こえているはずです。
これをもっと極端にしても同じ事で、余程ズレた試聴位置、もしくはスピーカーが大きく画面から離れていない限り、テレビの映像で再生される人物のセリフはその人の位置から聞こえてきます。
なぜセリフが不自然に下がらずキチンと人物の位置から聞こえてくるのかというと答えは簡単です。
脳内で定位を補正しているから。
つまり目で見た視覚情報に基づいてセリフの位置を脳が勝手に補正しているわけです。
脳がキチンと音の定位を補正してくれるおかげで違和感なくテレビに没頭できるという事になっています。
要するに音の定位など随分といい加減なものであって、脳はある程度の一定範囲の中であるのなら自在に音の位置を補正してしまうと言うことです。
それがテレビで俳優が喋るセリフの定位がキチンとしている理由です。
なぜこんなことが起こるのかというと、人物の位置とは違うところから声が響くと本能的におかしいわけで、その状況は異常なので勝手に脳が視覚情報にもとづいて正しい位置に補正してくれます。これは意識しなくとも全自動です。
音の定位なんてそれくらいいい加減な物です。
当然ですが勝手な思い込みでも音の定位は簡単に動きます。
これが恐ろしいのはケーブルで音が変わるとか、数百時間のエージングで音が激変とか、あるいは高価な機器ほど音がよく聞こえるとか、そういうある種の「信じ込みやすい人」はまとめてこういった錯覚や思い込みの現象すべてに対して積極的に肯定してしまうことで、こういう人はオーディオには向かないと言えます。
ですのでよく文章を見ているとイヤホンで音の定位がどうのこうの言っている人とケーブルで音が変わると云っている人、あるいはエージングの効果などオカルトチックな現象に対する肯定が「被っている」ことに容易に気がつくはずです。
人間の耳は測定器ではありません。極めていい加減でアバウトに出来ています。
そもそも脳は「その人の見たいと思っているものを積極的に見せる」という特性があるので、その傾向を理解した上で冷静にオーディオと向き合うべきだと僕は思います。
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