ひとつのイヤホンを徹底的に聞き込むというのは大事なこと
僕は試聴でレビューを一切書きません。
手に入れた物だけでレビューを書いていますし、これからもそうです。
試聴でちょっとした感想程度を書くのなら訳もないのですがそうしないのは僕の長年のオーディオ歴で「失敗」した買い物が数多くあるからです。
それにそもそもダイナミックドライバを使ったイヤホンだとだいたい30分から4時間はバーンインに回さないと音が不安定でレビューできません。
そこから更に早いイヤホンで聞き込みに30分、判断に迷うと3時間は聞き込みます。
個体のだいたいの傾向が掴めた時点で最終的にATRとの比較、また傾向の同じイヤホンを引っ張り出しての比較と面倒この上なく・・・
そうやって聞き込んだ結論をレビューに書くのにまた時間と手間が掛かると言うワケです。
これを店頭でやるのは不可能とは言いませんがちょっと無理があるなと言う事です。
ちなみにfinalのE3000なども試聴で判断していたらあの音はわからなかった可能性がありますので、やはりキチンと時間をかけないとある程度の経験があっても難しいと云うことになります。
それにもっとやっかいなのがその日の体調/心理状態です。
この影響はかなり大きく、いわゆるプラセボ/思い込みとは違ってあくまで体調面というかその日の心理状態に音が振り回されるのです。
音なんてコロコロと毎日何もしなくても変わってしまうものなのですが、これはオーディオでスピーカーやヘッドホンをガッチリと聞き込んでいる人はよく知っている話しです。
逆に言うとイヤホンの方は比較的簡単に「とっかえひっかえする」訳で、これをやっているとオーディオの大事な部分は見えてこなかったりします。
まぁこれはイヤホンのメリットのひとつなので一概に否定できないことなのですが、ひとつのイヤホンを徹底的に数ヶ月聞き込むというのも大切だと思います。
スピーカーの方でやっていると、僕などもそうなのですがひとつの機器を構成を変えずに数年聞き込むなどはザラで、5-10年単位で機器の音を聞き込んで行きます。
その理由のひとつとして金額が金額なのでそう簡単に次の物に移行できないという事、また何セットも部屋に置くなどというのはスペースの関係で難しいこと、と言うわけで失敗した場合でも数年は聞き込むことになるので選択するときの真剣さが違うという事です。
特に最低数年単位で聞き込むという事になると「最初は気に入っていた物でも段々とアラが目立ってくる」という事になりますので、より深く理解が進むという事でもあります。
こうしてある程度の年月が経過すると「何が大切なのかがわかってくる」という事に繋がってきます。
だいたい10-20年とオーディオをやっていて「解像度の追求」なんてやっている人はほとんど居ないんじゃないかと思いますが、こういう感じで、色々な物が振るい落とされていって最後に残る物があるのです。
こういうシーンに至るにはイヤホンをとっかえひっかえしているようではなかなか至らないので、できればいったん購入をストップするなどして気に入ったイヤホンを徹底的に最低でも数ヶ月は聞き込んで欲しいと思います。
そうしないと見えてこないものが確かにあるのです。