【レビュー】JVC HA-FD01 国産ハイエンドイヤホンの音
読者の方より期待のJVCイヤホンを2本も借り受けることが出来ました。なんと今回のイヤホンは市場価格がアマゾンで31000円という・・・これまで聞いた中ではERの4PTに次ぐ、当ブログでは滅多にない高価なイヤホンのひとつとなります。
最近は読者の方よりご自身で所有されるイヤホンのレビュー依頼を受けることも多く、ブログ冥利に尽きるなと思いを新たにするところ。
さて、このFD01はアマゾンでのレビューは★4以上が90%を占めるほどのイヤホンで、なおかつレビューも非常に良い。高価格帯では「価格の思い込み」がより発生しやすくなりますが、FD01の実力はいかばかりかと。
ちなみに今回はFD01とFX1100を借り受けましたが、ウッド振動板を実装したFX1100に関してはノート版V3マガジンの方でレビューしようと思います。読者の方より「酷評」も構いませんとの言質を得ているので、いつも通り忖度無しでレビューしていきます。
【JVC HA-FD01スペック】
■モデルナンバー HA-FD01
■ドライバー 1DD/
■感度103db
■インピーダンス16Ω
■周波数特性 8Hz ~ 52000Hz
■コード長1.2メートル
価格が高いだけあってか贅を尽くした作りです。チタンハウジングにカーボンコーティングの振動板と新開発したスパイラルドットイヤーピースなど、惜しみなくハイクオリティを追求した感じでしょうか。
ハウジングは結構重く大きい。イヤーピースはなぜか奥まで入りません。耳穴と云うよりも耳に押しつける感じで使うタイプのイヤホンのようです。
バーンインはお借りしたものなので分かりませんが、音の傾向から云うと変化は少ないタイプかと思われます。
【ノズルについて】
この製品はRHAのT20と同じようにノズルが交換出来るようになっているので、全部で3種類のノズルが付属しています。
それぞれ材質が違い、ノーマル状態ではステンレス製が装着されています。T20の時の印象で云えば、ノズルを変更する事により確かに音が変わるのですが、余り意味があるとは言いがたく・・たいていの場合ノーマルノズルで音合わせした印象を感じます。これまでの傾向からいえばノズルはあまりいじらない方がいいでしょう。ちなみ中高音域を中心に判断していますが、これはここがダメだと低音の判断以前の問題だからです。
■ステンレスノズル メーカー装着
これが最も音が良いというか、このイヤホンには合っているでしょう。
■チタンノズル
これが最も音が悪くなります。論外。エッジが非常に強調されて神経質な音を立てます。使うことはないでしょう。
■真鍮ノズル
この真鍮がこの中では最も良いエッジを描くのですが、中高音域の明瞭度が大きく下がり、リスニングに必要な下限を下回ります。元々あまりイヤホン自体の音の明瞭度が高いタイプではないので、ここから明瞭度が更に下がるのは難しいところ。ソースによっては使えないこともありませんが、推奨はしません。
FD01のノズルに関してはエッジと音の明瞭度に影響があります。RHAのT20のもそんな感じだったのでノズル部分における音の変化は主にそういうことなんでしょう。
使えるとしたら真鍮ノズルもありなのですが、ノーマル装着のステンレス製ノズルがもっとも一般的に好ましい音がすると思います。故にレビューはすべてノーマルのステンレス製ノズルによって行います。
【JVC HA-FD01音質】
音の基本傾向はウォーム系で帯域バランスはほぼ適正レベルで、おそらくカルボアイと同等クラスのバランスなので低域量は10段階評価で5というところ。
この部分はJVCの低域強めの音作りの傾向からと云うとモニターチックでかなり異色のタイプでしょう。これが「普通」と云えば普通なのですが・・・
問題なのは低域の量ではなく、このイヤホンは低域の出来があまり良くありません。かなり膨らみも大きく、かつ階調表現も不明瞭。それでいて量だけが適正近くになっているので低域周りは非常に不満が大きい。
難易度の低いソースなら問題なく鳴らせますが、ちょっと複雑なソースだと破綻気味になるのでこの程度の低域性能では厳しいと感じます。ましてや数千円のイヤホンではないので。
ボーカルフラットはいつものJVCで並。どれも似たようなレベルなので、JVCはここをフラットに詰める気がないのでしょう。意図的なのかどうかが分かりませんが、詰めた形跡はありません。
ボーカルは適度に前に出て、音色は暖かい。
このFD01の最大の問題は、エッジの出来がかなり安っぽいこと。尖った神経質な音を立てるので耳障りで聞いていられない。いわゆるジャパニーズサウンドそのものの音作りとなっています。
また中高音域の明瞭度がかなり低く、それだけではなくわずかですが「雑味」も音に乗ってきます。元々このイヤホンはウォーム系で音が暖かいのですが、暖かさだけでなく、この音は単なる雑味感と言ってしまってもいいでしょう。
おそらくこのわずかな雑味とウォームな傾向のせいで中高音域側がちょっと独特なカラーを帯びます。アコースティックなソースでは気になりませんが、厳しいソースでは分離が落ちたような音になり、なんだかパッとしない。
やはり全体的にエッジの出来がかなり悪いので、その点だけでも価格ほどの価値は感じられません。今まで聞いてきたJVCの音とは違い、よくあるイヤホンの音そのものです。
【JVC HA-FD01まとめ】
一言で云うとまさに「ジャパニーズサウンド」。出来は良くありません。JVCの低価格品で見受けられたあの気品すら感じるJVCチューニングがまったく見受けられず、いわゆる普通のイヤホンの音です。
ただそれだけとは言いがたく、音が不明瞭でわずかに雑味感を感じます。
この音ならこの価格で出す理由が全くなく、何のためにこんな価格を付けたのかがまったく分からない。
ノズルを交換しても質の悪いエッジはそのままで見所がない。低音もいつものJVCの低音ブースト気味な音作りからは離れ、ごく一般的な適正帯域バランスに近い音作りになってはいるのですが、突出して優れた部分が何もありません。
あくまでジャパニーズサウンドであり、あくまでそこら辺によくある日本製イヤホンの音です。
正直に書きましょう。この音ならゼロオーディオのカルボアイの方が優れています。カルボアイなら4000円で買える。その4000円ちょっとのイヤホンの音に3万円超えのイヤホンの音がハッキリと劣る。
音の明瞭度や低音の出来映えでいえばカルボアイの方が明確に音が良い。
それでいてエッジに見受けられる中高音域側の神経質な音は大して変わらない。
なぜJVCほどのメーカーがこんな「普通の音」というよりも、日本メーカー特有のイヤホンっぽい音作りをして、この価格で販売したのかがまったく分からない。例え1万円くらいで売っていたとしてもこれでは海外製の「普通」の音のイヤホンとはまるで戦えません。
見るべきところは帯域バランスの適正性のみですが、低音の出来の悪さがそれすらもスポイルしてしまっている。
それで評価なんですが、本来ならゴミではないので△評価すべきところです。ところが価格が価格で実売3万以上でこの音はないだろうと思うのです。そこまでの価値はとてもなく、音の価値としては1万以下が適正価格帯。一万以上でも戦うのは少し難しい音です。というわけで「価格」というコストパフォーマンスを加味して以下の評価となります。
正直、JVCにはこの方向の音作りは似合わない。こんな凡庸な音ならそこらへんのガレージメーカーに任せておけばいい。せっかく気品のある深い音作りもできるメーカーなのに残念です。
総合評価✖ どこをどう切り取っても単なる質の低いジャパニーズサウンド
JVC HA-FD01 カナル型イヤホン CLASS-S SOLIDEGE 高解像サウンド/リケーブル/フルステンレスボディ/Jマウントノズルチェンジシステム採用
- 出版社/メーカー: JVCケンウッド
- 発売日: 2017/12/20
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