【レビュー】SMSL SA-50 デジタルアンプ 50Wx2
超コンパクトタイプのデジタルアンプです。
こちらはAmazonにてほぼ「ベストセラー」と言ってもよいもので、レビューを参照していただければ分かるとおりかなり評価の高いアンプです。
価格が安く、なおかつコンパクトなデジタルパワーアンプで、この価格帯に競合するアンプが少ないこともあって事実上のスタンダードに限りなく近いと言ってしまっても良いかも知れません。
【SMSL SA-50 デジタルアンプ音質】
今回のテストにあたり鳴らすスピーカーは自宅のAVアンプ用エントリークラスの2.5WAYトールボーイスピーカを選択しました。
その理由はもともとAVアンプ系は駆動力に問題があるので、別途でピュア用のパワーアンプを入れない限りそれ以上のクラスのスピーカを鳴らすことは出来ないため、制限された環境で使えるように「あらかじめ軽いスピーカー」を導入しているからです。
逆に言えばこちらのスピーカを鳴らせないという事はエントリークラスでも危ないということでトールボーイはもちろんのことブックシェルフですらマトモに鳴らせるかどうかがアヤシいという事になります。
つまり用途がかなり制限されてしまうと言う事を意味します。
また比較用のデジタルパワーアンプはピュア用のものを使用しました。
こちらは各種の大型スピーカーを鳴らせる実力を確認しているので駆動力の比較対象としては全く問題ありません。
最初に結果から言ってしまえば、このSA50に関しては、駆動力は無いに等しい、と云うことがまず言えます。
デジタルアンプは見かけの駆動力が結構あるものが多いわけですが、それにもかかわらずこの程度の音ではまったくもってパワーアンプと呼称するのが恥ずかしいほどです。
まず問題なのは重低音がほとんど出てこないという事で、それに伴い低音域全体がかなりの制限を受けています。
ほぼ本来必要な低音が確保されないため、帯域バランスそのものが完全におかしくなります。
かつてイヤホンの項目で駆動力によって帯域バランスは変化しないという事を書きましたが、スピーカーではまったく条件が違うため、質どころかバランスそのものが大きく変化してしまいます。
ただしさすがにここまでの症状が出るのは余程パワーが足りないケースに限られてくるので、このSA-50に関しては駆動力に関してはかなり厳しい能力という事がまずハッキリと言えます。
SA-50で鳴らすと重低音が出てこなくなり、低音もかなり質と量ともに大きく減少します。
また、厳しい音源を鳴らすと中高音域が奥にグイッと引っ込みます。
この為、経験の少ない方は「奥行きが出た」とも言いかねませんが、本来は前に出るべきソースの音が奥に引っ込むのでこれは明らかな欠陥だと言えます。
音の質もかなり悪く、艶やかさがまったく皆無となり、パサパサした音でとても聴いていられません。
当方の個体ではレビューで問題になる顕著な音量の左右差であるギャングエラーは明確には確認できませんでしたが、これはこのクラスの価格帯のアンプにはよくある現象なのでこちらに関しては特に問題にしていません。
ギャングエラーで騒いでしまうと格安系のアンプはそもそも購入できなくなります。
ボリュームの部品の質の問題なので12時以上まで回し込む事で意図的に回避しましょう。
音質に関して細かい部分を指摘する以前に、このバランスと音では評価以前の段階だと言わざる得ませんので、SA50はゴミ以外の何ものでも無いでしょう。
追記
2.5WAYのトールボーイではどうやっても鳴らすことが出来ないのでエントリークラスの2WAYブックシェルフスピーカーでも再度テスト致しました。
結果としては「標準サイズのブックシェルフ」なら、何とか鳴らすことが出来る、と云う判断です。
ただし低音の質は悪く、重低音はかろうじて出る場合がある程度で進んでオススメできるものではありません。
ここでちょっと気になる現象を確認しましたので書いておきます。
低音の定位がズレます。
原因は分かりませんが、ボーカルは中央に定位しているにもかかわらず、低音だけが左右に大きくずれます。
何らかの回路的な問題なのか何なのか特定できませんが、これでは使い物にならないでしょう。
【小型格安デジタルアンプの選択肢は少ない】
なぜ市場に小型デジタルパワーの選択肢が少ないのかと言えば理由は簡単です。
こんなゴミをマーケットに出すのはまともなメーカーの仕事ではないからです。
少なくとも普通に音質判断ができる方なら一聴した段階でゴミ箱に放り込むレベルの音しか出せませんので普通のメーカーは開発を躊躇するのが当たり前です。
次に同程度のサイズのアンプの中身の写真をあつめたので参考にして下さい。
ただ中身がどうなっていようがこれは基本的には「電源部」に問題のある音なのでこの「手の平サイズのアンプ」では間違いなくどれもこれも鳴らないと云うのには変わりがありません。
このサイズはイヤホンやヘッドホンのためのサイズでスピーカーを鳴らすことなど出来るわけがありません。
SMSL SA-50の内部写真。
比較なので中華詐欺メーカーのひとつであるnobsoundの同程度のサイズの中身を掲載しておきます。
【TYSJ】Nobsound? Mini TPA3116 Audio HIFI 2.0 Channel Stereo Output Digital パワーアンプ 50WX2 DIY
- 出版社/メーカー: Nobsound
- メディア:
- この商品を含むブログを見る
catwalk1101earphone.hatenadiary.jp
上記の記事にも目を通しておいて下さい。
nobsoundがどんなメーカーなのか分かると思います。
またもうひとつFX-AUDIOの中身の写真も上げておきます。
こちらの方がまだマトモですが、出てくる低音にはおそらく大差は無いでしょう。
【SMSL SA-50 デジタルアンプまとめ】
こちらを絶賛している人が普段どのレベルのスピーカーを鳴らしているのかは推測するしかありませんが、おそらく入門用のブックシェルフまでだと仮定すれば、用途としては間違っては居ません。
ただ「とりあえずなんとか音は鳴るがただそれだけ」だと言える程度のアンプで、購入は推奨できません。
このアンプで音を鳴らしている方は本来スピーカーが持っているポテンシャルをすべて殺してしょうも無い音を聞いているとしか判断できず、他のアンプをお持ちの方はよく比較検討して結論を出すことを推奨しておきます。
もし比較検討して「低音を中心に圧倒差」を感じなければ、もともと比較するアンプが最低限の能力を有していないとは言えますので、元から買い換えを推奨しておきます。
実際のところ、エントリークラスのトールボーイ3WAYの必要なパワーアンプの駆動力を10点とすれば、こちらのSA50ではせいぜいが3点程度のレベルでしか鳴らせません。
2WAYのブックシェルフを鳴らす場合でせいぜい4点。
手の平サイズの超コンパクトスピーカーを鳴らす場合なら低音域がかなり関係なくなるので6点くらいでしょう。
要するにこちらのSA50を使うくらいならスピーカーを使うのを諦めた方が正解で、潔くヘッドホンを持ち出す方が理に適っています。
デスクトップPCでもこんなものを導入してはいけません。
お金をドブに捨てるようなものです。
また、似たような大きさと価格帯の中華製小型デジタルパワーはほぼコレと同じレベルと判断してもよろしいです。
内部構成と電源部の構成から言って駆動力に大した差が無いはずなのでコレは確信を持って言えることです。
と云うわけでこんなデジタルパワーにお金を出すくらいならもう少し予算を足してもっと大型のまともなアンプを用意するべきです。
残念ですが、せっかくスピーカを買ったのならこんなゴミで回り道せず、必要な場所に必要な投資を行い、無理をしてでも「スピーカーがもつ本来の音を聞く努力」をするべきだと僕は思います。
こんなもので鳴らされたらスピーカーを使う意味がありません。
国産のプリメインを買う方が余程マトモです。
総合評価✖️
追記
中華製パワーアンプの記事を公開致しました。
SMSL Sanskrit 6th 32bit/192kHz DACデコーダーUSB、光ファイバー/同軸入力 (ブラック Black)
- 出版社/メーカー: SMSL
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