【偽物注意報】クリプシュのX10の真贋鑑定を頼まれた結果
以前、偽物だらけのクリプシュのX10について個人的に「真贋鑑定」を行うよ、という話をしていた。これはウチの読者様が安心して本物を聞いて欲しいと言う願いからだ。
僕としてはクリプシュのX10シリーズは「信頼できるオーディオ販売店から買え」と口を酸っぱくして云ってきた。僕などはEイヤやフジヤエービックなどからしかクリプシュは買わないことに決めている。
もちろん割高だ。
だがしかし、鑑定料を含んでいると思えば妥当だと思う。
事実、eイヤからもフジヤエービックからもクリプシュのイヤホンは購入しているが、すべて間違いなく本物だった。
これらの販売店はオーディオ専門店としてのプライドがあり、もし万が一偽物をお客様に売ったという事になれば店が潰れることにもなりかねない。信用が一気に失われるからだ。
だからオークションや個人売買やネットの怪しいお店でクリプシュやshureを購入するのは非常に危険だと申し上げてきた。
今回、ノート版読者様がクリプシュのX10を個人売買ではなくネットの販売店にて「新品」を手に入れたが、一抹の不安があるので「本物かどうか鑑定して欲しい」とのことで二つ返事で引き受けた。
聞けば本物か偽物かなど5分以内で判別する自信がある。
送っていただいたX10の外観チェックからはじめて見た。
正直に言おう。
外観ではまったく判別不能だ。
コードやコードクリップを含めて、ハウジングもまったく同一のものに見える。
内心、「これ本物じゃね?」と思った。
試しにハウジングの同じ場所の大きさをデジタルノギスで測ってみたが・・・
■僕のX10 5.64㎜
■判定したX10 5.65㎜
0.01㎜で完全に誤差の範囲である。
ハウジングの刻印もまったく同じに見えた。位置も大きさもまったく分からない。
聞く前からいやこれ本物でしょと確信してしまった。
じゃあ音を聞いてみるかとDAPをオンにして判定を頼まれたX10を耳に嵌めてイントロが終わって確信した。
あああ、これ偽物だ・・・。
わずか5秒の出来事であった・・・。
具体的にいおう。
まず低音がブーストされている。本物よりもかなり低音が強いのだ。
それから中高音域がボヤッとする。
主にこれらの違いがあって、特にわかりやすいのはやはり低音のブーストだろう。
本物よりもかなり強いのでこの部分だけで分かってしまう。
しかし問題なのはここからだ。
この偽物X10は実に良く出来ている。
何しろコードや外観ではまったく判別不能。ネットでは偽物のハウジングは磁力でくっつくとか噂があるがそんなこともない。
ハウジングの色もほとんど同じに見える。
更に音だ。
この偽物X10は「音質チューニング」がかけられている。
つまり単に同じハウジングにドライバを適当に詰めたものではなく、一応、音質もちゃんと考慮されていることが聞き取れることだ。
本物はウォームであるが、この偽物X10と同じくウォーム。
ボーカル周りも少しだけ偽物X10が暴れ気味にはなるが、なかなかよく出来ている。
能率もキッチリ合わせてきているようで、聴く限りではおそらく偽物X10の方が1-2デシベル程度高いだけ。これくらいだとほぼ分からないだろうと思う。
エッジも柔らかくなっているのでソースによっては判別が困難な可能性が高い。
これではよく分かっていない人だと判別できない場合もかなりある。
おそらく2020年当たりの偽物クリプシュイヤホンは外観はもちろん音質までも煮詰めてきている。
単なるデタラメなイヤホンではないと思う。
もちろん聴く人が聴けば一発なのだが、比較検討無しでの判別は相当に困難だろう。
今回、偽物X10を聞いてかなり恐ろしいと思ったのが本当だ。
これではオークションやメルカリなど怖くて買えないと思う。
もし、安いからと云ってオークションや怪しいサイトやメルカリなどで買っている人はよくよく注意して欲しい。ほとんど偽物ではないかとさえ思う。
ノート版読者につきましては引き続き「真贋判定」は行わせていただく所存であるので、ぜひこちらをお読みの読者様もノート版をご覧になっていただければ幸いである。
てきれば本物のクオリティを安心して感じ取っていただきたいと思う。
最後に申し上げておくが、確かに偽物X10が本物に色々と似せてきているとは云え、本物だけがもつ再生クオリティは実現不可能だと断言しておく。