OEMイヤホンを知る yinyoo proとNICEHCK BRO
OEMという言葉を知っている人も多いと思います。
これはあらゆるところに蔓延っているのですが、OEM自体は別に悪いことではありません。
OEM=相手先ブランド
といいまして、開発や生産などの手間を省いてそれを別の会社に委託してしまうことを指します。
要するに「販売のみ」に特化していくわけですが、その製品について生産しているのはまったく別のブランドという事になります。
例えばAというイヤホンがあるとします。
これは「無名の中華工場」が開発・生産したものですが、これではまったく売れません。
なぜなら「誰も知らないブランド」ですから。
そこでAというイヤホンを非常に安い価格で例えばZ社に売り込むわけです。
その話に乗ったZ社はカラーや付属品などを指定して買い取り、それをZ社の名前を冠して売り出すわけです。
すると不思議なことに本来ならばまったく売れることのなかったAイヤホンがZ社の知名度と販売力に乗っかって「バカ売れ」する事になったりします。
これは例え話なのですが、オーディオ業界ではごく普通の話しです。
例えば国産のセットコンポなどはほとんどOEMではないかと思いますし、格安系のプリメインアンプなどもOEMの可能性があり、有名どころではゼンハイザーの価格の安いヘッドホンは日本のフォステクスのOEMです。
業界が違うカメラなどですとLEICAのレンズは日本のsigmaが作っています。
もちろんsigmaの名前は出していませんが・・・
これは自社でラインナップ全部を開発するのは無駄が多いので、特に価格の安い製品は名前だけで実際の開発と生産は「別な会社」が請け負っています。
あるいは自社で開発できないので「得意な工場や会社に任せてしまう」ということでもあります。
これは実話ですが、昔僕の知り合いがマランツの工場にアルバイトに行ったことがありまして、その時、ベルトコンベアでコンポを作っていたのですが、4-5社分のコンポを生産していて「中身は全部同じだ」と怒っていたことがあります。
要するにガワだけが違って中身の回路は全て同じものな訳で、これでもセットになるスピーカーは各社違うので音は違う、と云うわけです。
こういうことがありますので中華とは違って、国産や海外の有名ブランド品だと余りにも価格の安い物は買う価値がないと言えばないのです。
さて、このOEMを踏まえた上でyinyoo proとNICEHCK BROという中華イヤホンのお話しです。
この2つは価格もカラーも全く違いますが、これは「同じイヤホン」だと思われます。
いわゆるこれがOEMイヤホンと言われるもので、何処で生産されたのかが分かりませんが、同じ工場でカラーとMMCXケーブルを変えて納品されたのがこちらのイヤホンとなります。
ちなみにHICEHCK BROの方はマイク付き銀メッキ線が付属してその分価格に転嫁しています。
またBROの方が9.2㎜チタンコート振動板と書いてありますが、yinyooの方は無表記です。
チタンコートが嘘か、もしくはyinyoo proがチタンコートのことを書かなかったかのどちらかという事になるでしょう。
スペックがまったく一緒なのでドライバーが違うという事は考えらず、推して知るべしという所ではないでしょうか。
価格なんですがセール時には1900円~2000円に値下がりしますのでそのあたりが底値だという情報が来ていますが、ごく希に500円台という価格になったりもするので、驚いてしまいます。
ただOEMでも悪い物とは限りませんので、欲しければ買ってみるのがよろしいでしょう。
むしろ余力のある大手の工場などで生産されることも多く、yinyooとBROを無駄に2度買いなどしなければ面白い選択の1つとなるでしょう。
【HD820】ゼンハイザーがハイエンドで密閉を出す。
ちょっと別な記事を書くつもりでしたが、それはまた今度にして、今回はゼンハイザーのハイエンドモデルで遂に「密閉」を出す、というニュースを聞いたので今日はその話にしておきます。
もちろん音は分かりませんが、ハイエンドで密閉型を出すって何をとち狂っているのかと思ったりもします。
もともとゼンハイザーの音の特徴は「モニター系」という事につきます。
なので「音楽鑑賞」といものにはそもそも向かないと言えば向かないと云う傾向はあります。
ゼンハイザーのヘッドホンの音はもの凄く「無個性」という特徴があって、余りにも無個性な音なのでそれが逆に高く評価されているわけです。
そして大事なことはゼンハイザーの最高傑作はHD650であって、その上を目指して作られたHD800がその特性において過去のHD650を超えられない、というもの凄いことになっています。
それほど衝撃があったのがHD650の音で、ある意味今後を含めてこのモニターチックな音を超えられるヘッドホンは多分そう簡単には出てきません。
ただし、もの凄くつまらない音で非常に退屈です。
これはフラットバランスの音の特徴で、スピーカーでも試聴位置フラットにイコライザーを調整すると「似たような退屈な音」がしますので、主にミュージシャン系というかプロ向けの音となります。
このように当のゼンハイザーが650の音を超えようと苦心惨憺しているにもかかわらず、同じオープンエアのHD800では「超えられなかった」過去があるわけです。
そして今回発売するのはなんと驚くことに「密閉タイプ」
コレも何度も過去に言ってきていますが、密閉では絶対にオープンエアの音は超えられません。
もし逆に聞こえる人が居ればちょっと問題があると云いきってしまってもいいわけです。
ウルトラゾーネなどと言うアヤシげなメーカー以外ではハイエンドでは密閉はまったく存在しません。
なぜならどういう風に音を聞いてもオープンエアの方が素晴らしいのは自明なことで、これはもう普通に音を判断できる人なら「議論の余地すらない」という事になるからです。
僕の記憶では過去に密閉で非常に高評価を得たのがデノンの密閉でしたが、コレは既にディスコンとなっています。
それでもオープンエアの音を超えられたのかと言えばそこまでは到達していなかったと思います。
そこに来て今回ゼンハイザーが出すのがハイエンドの価格帯で密閉タイプの820と云うわけで、とても驚いています。
ただ普通に考えればハイエンドの戦場において密閉では勝負にならない、はずなのですが今回はどうなんでしょうか。
ちょっと気がかりなのは、イヤホンなどで育ってきてしまった世代は「密閉の音を高く評価する」傾向を感じていたりもしますので、この世代に合わせてきたのではないだろうなと云うことです。
イヤホンやヘッドホンで密閉の音に慣れきってしまっているので、特に「低音」という帯域でつまずいてしまうことが多いように見受けられます。
ちなみにHD820でゼンハイザーは「密閉型ヘッドフォンHD 820は、反響音を最小限に抑制する独自のガラストランスデューサーカバーにより、驚くほど透明感のあるサウンドを届けます」
と言っていますので、密閉型でそんな音のするヘッドホンは今まで聞いたことがなく、それが本当なら大したものだとも思うのですが、ちょっと眉唾ものなので、久々に聞いてみたいなと思った次第です。
ちなみに2018年8月2日に発売で、価格は281880円と堂々たるハイエンドの価格となっています。
ゼンハイザー ヘッドホン オープン型 HD 650【国内正規品】 | ||||
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ゼンハイザー Sennheiser HD800 ダイナミック・オープン型ヘッドフォン 並行輸入品 | ||||
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小さすぎるスピーカーを買ってはいけない
以前アンケートを採ったときにだいたいウチの読者の方の50%位がスピーカー所有者で驚いたのですが、まだスピーカーを持っていない方もそのうちいつかこちらの世界に来るかもしれず、エントリークラスのスピーカーについての一般的な意見を書いておきます。
【小さすぎるスピーカーを買ってはいけない】
最低でもブックシェルフと言われる標準的な大きさが必要です。
異論はあるでしょうがスピーカーは「大きければ大きいほど有利」となります。
もちろん大きくなればなるほどパワーアンプやプリアンプの性能がそのまま出てきてしまうので余計にお金が掛かるのですが、それでも買える予算の中で極力大きいスピーカーを買う必要があります。
最低の大きさの目安ですが、だいたい幅18センチ×高さ28センチ×奥行き28センチ、つまり高さと奥行きが約30センチ程度のスピーカがひとつの目安となります。
このサイズのスピーカをワンペアで用意してみれば分かりますが「実物は意外に大きく」、PC周りなどの目の前に設置するとなるとかなり場所を取ると云うことは言えます。
ですが、このサイズはハッキリ言って「最低のサイズ」です。
もちろんもっと小さくて評判の良いスピーカーもある事はあるのですが、例を挙げればモニターオーディオのロングセラースピーカーなどになります。
モニターオーディオ スピーカー Radius Series 90 [ウォルナット ペア] | ||||
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これなどはピュアのマニアでもかなり有名なのですが、出てくる音は愕然とするほどしょうもない音です。
ちなみにこのサイズは幅13センチ×高さ20センチ×奥行き16センチ程度です。
といってもコレが悪いわけではなく、たぶん大きさそのものの問題であって、このサイズのスピーカーではこの程度の音しか出せないと言えば出せません。
というのも僕は一時期書斎でこのサイズを使おうとして似たようなサイズは一通り視聴しましたがどれもどんぐりの背比べ状態で・・・何も買わずに帰ってきた経験があります。
と云う訳なのでスピーカーではドライバサイズと筐体の容量というのは単純に重要です。
ここで憶えておいていただきたいことは「小さいスピーカはそれだけで不利」という事実です。
気持ちは分かるのです。
小さな部屋でコンパクトに鳴らしたい、という需要が大きいのも昨今の住宅事情を考えてもわかるのですが、このサイズでは音がついてこられない、のでせっかく予算を掛けてもそれに見合う音はまずもって不可能です。
やはりどうしても「ある程度の大きさ」というのはスピーカーにおいては無視できない要素のひとつであって、部屋全体の空気を振動させて音を鳴らすわけですから「小さなスピーカー」というのはそれだけで無理があると云うわけです。
そう言ったことが「音に出てしまう」のは紛れもない事実なので、スピーカーを購入しようとする方は予算の中でまず極力大きいものを購入する、と云うことは実際問題として大変重要なこととなります。
イヤホンはデジタルアンプで聴こう&【DP-X1の駆動力テスト】
僕はいつもアナログアンプの使用を勧めていますが、イヤホンだけはデジタルで聴くのがオススメです。
と云うよりもむしろイヤホンは積極的にデジタルアンプであるDAPを通した方がよりよくメリットが活きてシャキッとした音が鳴ります。
これは一言で言うとイヤホンというものは耳の穴に直接突っ込んで聞くモノなので、わずかでも音が眠くなったりボケたりするとハッキリと劣化したように感じてしまうという特性によるモノだと考えています。
なのでイヤホンに関してのみアナログアンプではなく、純粋なD級スイッチング電源を持つデジタルで聴いて欲しいと思っています。
というのも先日、学生さんよりDMで質問があって休日という事もあり、自宅の据え置きのアナログアンプでイヤホンを鳴らしてみました。
するとまあ音がボケるというか眠いというかスカッとしないわけです。
何かこう一枚ヴェールを被せたような音になってしまうわけです。
それが思った以上に酷かったのでイヤホンはデジタルアンプが似合う唯一の音響機器と云うことでよろしいかと思われます。
ちなみに同じアナログアンプでヘッドホンを鳴らすと非常に気持ちよく聞けるので、ヘッドホン以上の機器に関してはコレまで通りの「アナログアンプ推奨」というのは変わりません。
うーん。
根本的にDAPの音がしょうも無いのはそうなんですが、それが「わかりにくい」というかイヤホンとデジタルはマッチングが優れていることは事実です。
このあたりのイヤホンとデジタルアンプの相性の良さというか、イヤホンの「メリット」をグッと引き出すという事を鑑みても、イヤホンがもつ基本的な表現力不足とやたらと高い解像度がデジタルアンプで良い方向に向いている、と云うことなのでしょう。
と云う訳なので「イヤホンの方は積極的にデジタルのDAPを使用して下さい」という事を声を大にしていっておきます。
いまアナログアンプの方はイヤホンを聴くときだけはむしろデジタルに変更して下さい。
そのほうが往々にして聴感上は良い結果を生み出します。
ちなみにこの時DP-X1と据え置きアナログアンプで駆動力のテストも同時に行ってみました。
結果としては従来から言っているとおりで、X1の駆動力はイヤホンに関しては完全に合格です。
まったく問題なくイヤホンを鳴らしていますのでやはりX1クラスの電源部がイヤホンではひとつの基準になると言えます。
それからX1とパイオニアの300Rとかではイヤホンをアンバランス接続で聴く限りは違いは無いと思いますので、そのあたりの機種をお使いの方はイヤホンを楽しむ限りにおいての駆動力は満たされていますので無視して構いません。
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KZの低音について
以前よりイヤホンは低音向きか中高音向きかでハッキリと得意不得意が分かれてしまうので「両立しない」と言う事を書いていますが、KZはすべて基本的には「中高音向け」のイヤホンとなります。
しっかり音を聞いている方には敢えて宣言して別記事で上げることのほどではないのですが、KZは低音がかなり不得意です。
この為、他の低音が得意な傾向を持つイヤホンと比較してしまうとかなり明確に分かってしまうので「低音好き」な方は他のメーカーのイヤホンを探した方が良いでしょう。
例えばです。
KZの中でもES3/4あたりは低音が良い方なのですが、これは他のKZと比較した場合のお話しであって、サウンドピーツのB10とかDZAT DR20あたりと比較すると低音はかなり質が悪く、なおかつ階調表現なども非常にレベルが低いという事になります。
もう一度言いますが、KZはメーカーの傾向として低音がダメです。
DDのチューニングが分かっていない可能性がかなり高く、この点は声を大にしていっておきます。
ただこれはイヤホンでもスピーカーでも何でもそうなんですが・・・低音をきっちり表現するというのはやはり難易度が高いのだと思われます。
中高音域向きなイヤホンは結構数があるのですが低音向きという事になると極端に数が少なくなります。
中華だと単に低音の量が多いと言うのはたくさんあるのですが、質というのはちょっと難しいのかもしれません。
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AVアンプで音場と音は両立しない
誤解されやすい「駆動力」を詳しく語ってみる
【イヤホンの場合】
主に差が出るのは「低音部分」となります。
駆動力の差で帯域バランスが変化してしまいボーカルが引っ込む等という極端な現象は起こしません。
低音量にも差は出ません。
主に「質的な変化」が中心となりますので、イヤホンで駆動力を語る場合は低音の質的な変化を読み取るようにして下さい。
具体的に体感したい方はM20/A01/iphoneなどは駆動力のレベルが同じなので、DP-X1をお持ちの方は低音を比較してみて下さい。
ただしもう一度言っておきますが「低音の量」に変化は起こしませんのでもしそのように聞こえる場合はDAPの音量差による錯覚です。
そこは誤解しないようにして下さい。
イヤホンの場合でも駆動力の差というものは歴然と出てしまいますが、限られた部分である事に注意して下さい。
また、駆動力の差もスピーカーと比較すると「微々たるモノ」なので、こういった差が小さい部分であると往々にして「プラセボ/思い込み」が入り込んでくるので、実際には「差が無い」のに「差があるように聞こえるケース」が多々出てきますので注意が必要です。
【スピーカーの場合】
劇的な変化を起こしてしまいます。
全域にわたって音質の劣化、帯域バランスの変化、低音、特に重低音が出力されないなどの大きな変化を引き起こします。
特に駆動力が足りない場合はボーカルが完全に引っ込むどころか中高音域全体がグッとセンターイメージの奥に下がります。
特に顕著なのは「低域成分」が多いソースだと途端に中高音域が奥に下がりだしたりしますので注意が必要です。
スピーカの場合、組み合わせるドライバーが重いとセパレートの20-30万程度のパワーアンプではそもそも鳴らないケースも多く、このクラスを比較対象としても「実際のスピーカーの実力」はまったく分からず誤解したままとなるケースも多発します。
コレが悲しいのは買ったスピーカの真の実力すら引き出せないことで、その状態が「鳴らし切っている」と判断して駆動力を語ってしまう、ということです。
よくあるのが例えば5万円のパワーアンプを買って、20万円のパワーアンプと比較したりして「確かに20万円の方がいい」というのは分かっても劇的な差が無いなどと言う場合も多く、こういうケースではそもそも20万円のアンプの実力に疑いが出ます。
セパレートのパワーアンプの世界は魑魅魍魎が住んでいるのでそう簡単に「鳴らし切る」という事にはたどり着かず、このあたりはイヤホンやヘッドホンとは訳が違います。
コレも何度も語っていますが100万円のパワーアンプでも駆動力が足りない、等という事はごく普通にあるのでそもそもどのアンプなら鳴らせるのかがやってみないと分からない世界となります。
僕がなぜ駆動力が足りているか足りていないかを判断しているかと言えば、僕が使うパワーアンプはすべて強大な駆動力を既に大型スピーカーで確認済みだからです。
そもそも駆動力不足で散々苦しめられてきたのでパワーアンプの駆動力にはかなりウルサく、その経験から判断しているので十分な駆動力を持つアンプで駆動した場合のテストソースの帯域バランスを分かっているのでその点から駆動力の有無を判定しています。
ただしそれでもギリギリの場面では比較試聴無しでは判断できません。
それほど鳴らし切る場合の駆動力の判断は難しくなります。
【ヘッドホンの場合】
基本的にイヤホンに近い変化を起こします。
なので低域の質的な変化が中心となります。
イヤホンと同じくアンプにはそれほど強大な駆動力が要求されることはないので、鳴らすのはそれほど難しくはありません。
スピーカと比較すると、とても楽です。
たださすがにポータブルDAPはちょっと厳しいので、別途で据え置きタイプなどを導入したりする必要はあります。
このあたりは敏感なタイプのヘッドホンと鈍感なタイプのヘッドホンでもずいぶんと違うので鳴らしやすいのは鈍感なタイプとなります。
注意しなければならないのは敏感なタイプの場合、アンプでバリバリと音が変わってしまうのですがコレは駆動力ではなく、アンプの質の問題です。
そこは誤解しないようにして下さい。
【駆動力あればあるだけ音が変わるわけではない】
駆動力は必要なだけあればそれ以上は変化を起こしません。
駆動力はあればあるだけ「音の余裕」を生み出すわけではありません。
このあたりを誤解している方も多く、まるで駆動力をクルマの馬力と勘違いしているのでそういう事になります。
クルマなら排気量が大きければ大きいほど低速でも余裕が出てきますが、パワーアンプの駆動力はそれとはまったく違います。
つまりこういうことです。
あるイヤホンがあると仮定します。
そのイヤホンを鳴らすのに10段階で5の駆動力があれば「鳴らし切る」ことができると仮定します。
つまり平均的な駆動力で鳴らせるイヤホンな訳です。
そこに10のパワーを持つアンプを持ち込んでも、そのイヤホンはあくまで5の駆動力で鳴るだけです。
10のパワーを持つからと言って余剰となった5段階分のパワーが音の余裕となって更にいい音で鳴るわけではないのです。
駆動力は満たされていればそれでよいのです。
問題なのは5のパワーが必要なイヤホンを4の力しか無いアンプで鳴らしたりする場合でこの場合は低音がシャキッとしなくなります。
ただどうもイヤホンの場合、だいたい大きく分けると駆動力はそれほど細かな分類は必要なく、どうも3段階くらいしかないような感じがしますので、そんなに苦労せずに鳴らせるはずです。
前にも一度言いましたがDP-X1クラスでもう十分な駆動力の音はしていますので、下手にイヤホンでポタアンを持ち込んでもお金の無駄だと言うワケです。
イヤホンの駆動力に関してもプラセボ/思い込みがあるので「まだ不足している気がする」程度ではたいていの場合単なる思い込みです。
なので結論から言えばスピーカーでの駆動力の追求はかなりの難易度ですが、イヤホンとヘッドホンに関しては「駆動力はそれほど必要なわけではなく、イヤホンの場合は3万円以上の専用DAPならたいていの場合は十分で、ヘッドホンの場合はアナログの据え置きアンプを基準にすればほぼ十分だと判断できます。
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【レビュー】SMSL SA-50 デジタルアンプ 50Wx2
超コンパクトタイプのデジタルアンプです。
こちらはAmazonにてほぼ「ベストセラー」と言ってもよいもので、レビューを参照していただければ分かるとおりかなり評価の高いアンプです。
価格が安く、なおかつコンパクトなデジタルパワーアンプで、この価格帯に競合するアンプが少ないこともあって事実上のスタンダードに限りなく近いと言ってしまっても良いかも知れません。
【SMSL SA-50 デジタルアンプ音質】
今回のテストにあたり鳴らすスピーカーは自宅のAVアンプ用エントリークラスの2.5WAYトールボーイスピーカを選択しました。
その理由はもともとAVアンプ系は駆動力に問題があるので、別途でピュア用のパワーアンプを入れない限りそれ以上のクラスのスピーカを鳴らすことは出来ないため、制限された環境で使えるように「あらかじめ軽いスピーカー」を導入しているからです。
逆に言えばこちらのスピーカを鳴らせないという事はエントリークラスでも危ないということでトールボーイはもちろんのことブックシェルフですらマトモに鳴らせるかどうかがアヤシいという事になります。
つまり用途がかなり制限されてしまうと言う事を意味します。
また比較用のデジタルパワーアンプはピュア用のものを使用しました。
こちらは各種の大型スピーカーを鳴らせる実力を確認しているので駆動力の比較対象としては全く問題ありません。
最初に結果から言ってしまえば、このSA50に関しては、駆動力は無いに等しい、と云うことがまず言えます。
デジタルアンプは見かけの駆動力が結構あるものが多いわけですが、それにもかかわらずこの程度の音ではまったくもってパワーアンプと呼称するのが恥ずかしいほどです。
まず問題なのは重低音がほとんど出てこないという事で、それに伴い低音域全体がかなりの制限を受けています。
ほぼ本来必要な低音が確保されないため、帯域バランスそのものが完全におかしくなります。
かつてイヤホンの項目で駆動力によって帯域バランスは変化しないという事を書きましたが、スピーカーではまったく条件が違うため、質どころかバランスそのものが大きく変化してしまいます。
ただしさすがにここまでの症状が出るのは余程パワーが足りないケースに限られてくるので、このSA-50に関しては駆動力に関してはかなり厳しい能力という事がまずハッキリと言えます。
SA-50で鳴らすと重低音が出てこなくなり、低音もかなり質と量ともに大きく減少します。
また、厳しい音源を鳴らすと中高音域が奥にグイッと引っ込みます。
この為、経験の少ない方は「奥行きが出た」とも言いかねませんが、本来は前に出るべきソースの音が奥に引っ込むのでこれは明らかな欠陥だと言えます。
音の質もかなり悪く、艶やかさがまったく皆無となり、パサパサした音でとても聴いていられません。
当方の個体ではレビューで問題になる顕著な音量の左右差であるギャングエラーは明確には確認できませんでしたが、これはこのクラスの価格帯のアンプにはよくある現象なのでこちらに関しては特に問題にしていません。
ギャングエラーで騒いでしまうと格安系のアンプはそもそも購入できなくなります。
ボリュームの部品の質の問題なので12時以上まで回し込む事で意図的に回避しましょう。
音質に関して細かい部分を指摘する以前に、このバランスと音では評価以前の段階だと言わざる得ませんので、SA50はゴミ以外の何ものでも無いでしょう。
追記
2.5WAYのトールボーイではどうやっても鳴らすことが出来ないのでエントリークラスの2WAYブックシェルフスピーカーでも再度テスト致しました。
結果としては「標準サイズのブックシェルフ」なら、何とか鳴らすことが出来る、と云う判断です。
ただし低音の質は悪く、重低音はかろうじて出る場合がある程度で進んでオススメできるものではありません。
ここでちょっと気になる現象を確認しましたので書いておきます。
低音の定位がズレます。
原因は分かりませんが、ボーカルは中央に定位しているにもかかわらず、低音だけが左右に大きくずれます。
何らかの回路的な問題なのか何なのか特定できませんが、これでは使い物にならないでしょう。
【小型格安デジタルアンプの選択肢は少ない】
なぜ市場に小型デジタルパワーの選択肢が少ないのかと言えば理由は簡単です。
こんなゴミをマーケットに出すのはまともなメーカーの仕事ではないからです。
少なくとも普通に音質判断ができる方なら一聴した段階でゴミ箱に放り込むレベルの音しか出せませんので普通のメーカーは開発を躊躇するのが当たり前です。
次に同程度のサイズのアンプの中身の写真をあつめたので参考にして下さい。
ただ中身がどうなっていようがこれは基本的には「電源部」に問題のある音なのでこの「手の平サイズのアンプ」では間違いなくどれもこれも鳴らないと云うのには変わりがありません。
このサイズはイヤホンやヘッドホンのためのサイズでスピーカーを鳴らすことなど出来るわけがありません。
SMSL SA-50の内部写真。
比較なので中華詐欺メーカーのひとつであるnobsoundの同程度のサイズの中身を掲載しておきます。
【TYSJ】Nobsound? Mini TPA3116 Audio HIFI 2.0 Channel Stereo Output Digital パワーアンプ 50WX2 DIY
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上記の記事にも目を通しておいて下さい。
nobsoundがどんなメーカーなのか分かると思います。
またもうひとつFX-AUDIOの中身の写真も上げておきます。
こちらの方がまだマトモですが、出てくる低音にはおそらく大差は無いでしょう。
【SMSL SA-50 デジタルアンプまとめ】
こちらを絶賛している人が普段どのレベルのスピーカーを鳴らしているのかは推測するしかありませんが、おそらく入門用のブックシェルフまでだと仮定すれば、用途としては間違っては居ません。
ただ「とりあえずなんとか音は鳴るがただそれだけ」だと言える程度のアンプで、購入は推奨できません。
このアンプで音を鳴らしている方は本来スピーカーが持っているポテンシャルをすべて殺してしょうも無い音を聞いているとしか判断できず、他のアンプをお持ちの方はよく比較検討して結論を出すことを推奨しておきます。
もし比較検討して「低音を中心に圧倒差」を感じなければ、もともと比較するアンプが最低限の能力を有していないとは言えますので、元から買い換えを推奨しておきます。
実際のところ、エントリークラスのトールボーイ3WAYの必要なパワーアンプの駆動力を10点とすれば、こちらのSA50ではせいぜいが3点程度のレベルでしか鳴らせません。
2WAYのブックシェルフを鳴らす場合でせいぜい4点。
手の平サイズの超コンパクトスピーカーを鳴らす場合なら低音域がかなり関係なくなるので6点くらいでしょう。
要するにこちらのSA50を使うくらいならスピーカーを使うのを諦めた方が正解で、潔くヘッドホンを持ち出す方が理に適っています。
デスクトップPCでもこんなものを導入してはいけません。
お金をドブに捨てるようなものです。
また、似たような大きさと価格帯の中華製小型デジタルパワーはほぼコレと同じレベルと判断してもよろしいです。
内部構成と電源部の構成から言って駆動力に大した差が無いはずなのでコレは確信を持って言えることです。
と云うわけでこんなデジタルパワーにお金を出すくらいならもう少し予算を足してもっと大型のまともなアンプを用意するべきです。
残念ですが、せっかくスピーカを買ったのならこんなゴミで回り道せず、必要な場所に必要な投資を行い、無理をしてでも「スピーカーがもつ本来の音を聞く努力」をするべきだと僕は思います。
こんなもので鳴らされたらスピーカーを使う意味がありません。
国産のプリメインを買う方が余程マトモです。
総合評価✖️
追記
中華製パワーアンプの記事を公開致しました。
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【中華詐欺メーカー】Nobsoundについて
先日、中華アンプを物色していて完全な詐欺メーカーを見つけましたので報告しておきます。
Nobsound
日本のアマゾンにも結構な数がOEMとして入ってきていますので注意が必要です。
ちなみに詐欺の証拠はこちらです。
既にAmazonでは「在庫切れ」となっていますが、そのページへのリンクも張っておきます。
レビューを参照してみて下さい。
こちらのアンプはトランスが搭載されていません。
また真空管も全部ハッタリという恐るべき中華アンプです。
レビューではプリ部が真空管というハイブリッドアンプだと書かれている方も居ますが、そうではなく、こちらは完全な半導体アンプです。
つまり真空管はプリ段にも使われていません。
ヒーター点灯のみに電源を供給していかにも真空管が動いているように見せかけている製品となります。
こんなゴミにどのような評価がついているのか、一度見てみるべきでしょう。
https://www.amazon.co.jp/【TYSJ】Nobsound-MS-10D-パワーアンプ-ヘッドフォンアンプ-真空管アンプ/dp/B00MPC70C2
こちらは同じアンプのアメリカAmazonでの評価となります。
こちらはまだ日本で売られている詐欺アンプとなります。
レビューがついていますが、さすがにレビュワーが「警告」を出しています。
他のNobsound製品に関してはこちらにリンクを貼っておきますので、こういった詐欺を一度でも行ったオーディオメーカーの日本参入を阻むべく、拡散を希望致します。
ただし、現状では他のNobsound製品がこのような詐欺をまだ行っているのかの確認は取れていませんが、まともなメーカーとは言いがたく、このようなメーカーは避けて通ることで対処するのが最も適切かと思われます。
【次回予告】 SMSL SA-50デジタルパワーアンプ
さて、いつもの次回予告ですが、今回はAmazonで大人気のデジタルパワーアンプに行きます。
こちらのパワーアンプは格安小型のデジタルパワーアンプで、レビュー件数を見ても分かるとおりかなりの人気となっています。
元々僕はデジタルは音が悪いのでダメだと言う人間ですが、かなり前に手に入れてあった物を興味が無いので放置プレーしていたものです。
これをきっちりテストして本当に「使える製品」なのかどうかを明らかにしようと思います。
これが有効なら初心者がスピーカーを購入しやすくなりますし、デスクトップオーディオでも有効だと思われますが、さてどういう結論に至るのかはお楽しみに。
おそらくですが中華の格安デジタルパワーアンプはすべて「同じような実力」といえるでしょうから、実際の性能がどの程度なのか、もっとも気になる駆動力と音質を中心にレビューしたいと思います。
追記
記事を書きました。
こちらからどうぞ。
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